日本の金融政策と金利見通し
先週の日銀政策決定会合では、市場の一部にYCC再変更の予想もあったが、結局は金融政策の現状維持が決定された。一方で資金供給の拡充策を追加、イールドカーブの歪み是正に動く。具体的には金融機関に10年以下の資金をゼロ金利で貸出すことで、金融機関が国債を購入することで市場金利を低下させる効果を狙っており、どちらかと言えば金融緩和策といえよう。同時に公表された2023年のインフレ見通しは1.6%と前回から横ばいとし、物価上昇が日銀目標の2%を安定的に超えるためには異次元緩和を続ける必要があるとした。
図1は日銀会合を受けたイールドカーブの変化。12月会合直前の国債カーブ①12/16が、12月のYCC変更を受け1月会合直前には②1/17まで上昇。ただしYCCの変動幅を拡大した10年だけでなく 3~40年まで全体的に上昇したため、10年金利は直後に上限の0.5%に張付き歪は却って拡大した。会合後は政策変更なしとなり反動で③1/19へと低下している。一方で新たな資金供給オペの対象となる5年中心に金利は低下したが10年前後の金利の歪は残り、今後はオペの対象年限に応じてカーブがさらに歪む可能性もある。日銀による市場管理が強まり、前回会合で黒田総裁がYCC変更の根拠とした正常な市場機能の回復からは却って遠のいたようにも見える。
異次元緩和継続の背景には、同時に発表された2023年のインフレ見通しが1.6%と目標の2%を下回ることが挙げられるが、筆者はインフレ率はもっと高くなると予想する。図2は日米欧のPPI(生産者物価指数、前年比)と日本のCPI(消費者物価指数、前年比)の推移。PPIは原材料など物価変動の川上部分であり、通常CPIは企業努力や賃金などの緩衝材の影響でPPIより変動幅は小さくかつ遅れて動く傾向がある。昨年は2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け原油など資源価格全般が急騰した影響で、日米欧ともにPPIは急上昇。特にロシア産ガスへの依存度が高かった欧州は一時的に40%を超えて上昇、一方で日米のPPIは共に10%の上昇にとどまった。但し足元では欧米でPPIが下落基調に転じたのに対し、日本のPPIは上昇を続けている。上述のとおり、CPIはPPIに遅れて動く傾向があるが、米国では既にCPIもピークアウトした。一方、日本のCPIはガソリン補助金等の影響もあり、いまだPPIに追随して上昇する段階にあり、今後さらなる上昇も予想される。つまり日銀は早晩CPI見通しの上方修正に動くと思われ、そのときは再度のYCC変更となり、10年国債金利はYCCや資金供給オペなどの制約がない10年スワップが示していた1%を目指すと予想される。
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