日米の株と債券、今投資するなら
SVB破綻を発端とする金融不安の広がりを受け、世界的に金融株を中心に株価は下落した一方、債券価格は上昇(金利は低下)した。このタイミングでの投資対象をリスク/リターンから考えてみる。
表1は代表的な資産のヒストリカルボラティリティー(HV) 及びリスク・リターンの目安としてシャープレシオ(=収益/HV)を直近20営業日、3ヶ月、1年で算定したもの。ここでの収益は、債券は最終利回り、株式は配当利回りとし、債券のHVは標準物の価格変動とする。表を見ると金融不安の広がりとともに、通常HVが低く安全資産とされる債券のHVが直近20営業日で急上昇、一方で株式は全体的に低位で安定している。米10年国債のHVはNYダウを上回りリスクリターンは悪化、金融不安が広がる中、米国で見られた債券から株式への資産逃避という妙な投資行動も、リスクリターンの観点からある程度理にかなった行動といえよう。
また円建て投資の場合は為替の影響も加わり少し風景が異なる。表1において、米10年債のドル建てと円建て投資を比較すると、円建て投資の方がHVが低くシャープレシオも高くなる。これは米金利が上昇するとドル高となるため、円建てで米債券投資をする場合は為替と債券価格が互いにヘッジ効果(ドル安&金利低下vsドル高&金利上昇)を発揮し結果的にHVが低下するため。ただし長期投資を考えた場合は為替のHVは債券より高くなることが多く、米2年債で見ると1年HVは円建てがドル建ての約3倍となり、ヘッジ効果より為替の高HVの影響の方が大きくなる。次に株式投資を見てみると、米株が上昇するときはドル高となり易く、円建て投資をする場合は変動が増幅されHVは上昇することになる。このヘッジ効果を投資対象毎の為替(ドル円)との相関係数として表2にまとめた。例えば金利と為替の相関=1なら金利上昇&ドル高、NYダウと為替の相関=1ならNYダウ上昇&ドル高を示す。足元では金融不安が広がり米金利は低下、円が避難通貨として買われドル安となり、相関係数は0.95とほぼ1。一方で株式は、株価が下落したのに対しドル安となり相関係数は0.59と順相関。しかしながら3ヶ月遡ると、株価は金利上昇を警戒して動いていたため、(金利上昇による)ドル高で株下落となり逆相関だった。
このように、投資対象を決めるには、株、債券、為替の方向性と相関を考慮に入れる必要があるが、仮に為替の影響を排除したければ、円債或いは日本株となる。今後日銀のYCC見直しの可能性、加えてシャープレシオを踏まえると日本株か。また円建て投資の場合は、米債、米株ではシャープレシオを見ると米2年債が優位だが、過去実績を踏まえると米株には配当利回り以外(キャピタルゲイン)の寄与も期待でき、現状のHVと相関係数からは米債より米株か。
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