日本にチャンス到来

最近、日本を取り巻く環境は変化、久しぶりに日本にチャンスが巡ってきたように見える。ここで背景、今後期待される未来を確認しておこう。

ChatGPT(生成AI)…米OPEN AI社が開発、昨年11月に公表し、その能力の高さから世界を驚かせた。その後、著作権問題や誤情報の拡散リスクから、意外にも利用を制限する国、企業が続出した。背景として、19世紀の産業革命期に機械化により仕事を奪われるとして機械を破壊するラッダイト運動が広がったが、今回はホワイトカラーによるラッダイト運動のように見える。真っ先に禁止したイタリアは27ヶ国から成るユーロ圏の一員で多国語を操ることがエリートの条件の一つ、AIの翻訳機能がエリートにとって死活問題との懸念があるようだ。次に中国、市民に共産党への忠誠を求めるため不都合な情報を遮断する必要があるが、AIに対して検閲を行うのは難しく問題視せざるを得ないのは分かる。意外なのはAIを開発した米国、ハイテク企業のトップには博識で最新技術に精通した人材が多いが、その分野はAIが得意とするところ、彼らも内心脅威を感じているのかもしれない。さて翻って日本はAI導入に前向きだ。会社トップから歴代首相まで流暢に英語を操れる人は少なく、さらに事業報告書から国会答弁まで原稿はスタッフが作っており、官僚だろうがAIだろうが優秀な方が良いとの考えが背景にあるのだろう。さらに日本の知見を集める医療関係においても、レントゲン画像やDNA解析におけるAI活用が期待され、結果的に財政支出の3割を占める医療関係コスト削減を通じ、財政赤字拡大にブレーキがかかるかもしれない。

EV(電気自動車)…欧州は2035年にHV(ハイブリッド)を含むガソリン車の新車登録廃止を表明したが、ドイツの反対で承認を延期した。この背景にはEV開発で米中の後塵を拝するビジネス面の問題だけでなく、充電時間の長さと施設不足が原因で充電スタンドには長蛇の列が恒常化、EVを手放す動きが顕在化しているなどの現実がある。さらにウクライナ紛争によるエネルギー需給の不安定化から、EV増加による電力不足で産業活動が停止しかねない。今後は、トヨタが予想した「充電問題と電力事情からEVはHVと共に繋ぎで本命はFCV(燃料電池車)」とする方向に向かうかもしれない。特に日本は電力の7割が化石燃料由来であり、エネルギー効率を考えると化石燃料を燃やして作る電力経由より化石燃料を燃やして走る方が効率的に良いはずだ。ガソリン補助金の影響もありEV普及が遅れる現状を踏まえると、ここは一気にFCV導入へのジャンプが期待される。

物価上昇…日本もようやくデフレ脱却が視野に入る。一方でSVB問題で金融機関の不調が経済成長を圧迫することが再認識された。過去20年に渡るゼロ金利政策によって利益の源泉を絶たれてきた日本の金融機関にも、金利復活と共に成長マネーの供給再開が期待される。加えて物価上昇となれば、賃金上昇が期待できる勤労世帯だけでなく、金融資産の大半を持つ高齢世帯も資産の減価を回避すべく実物消費に資金を回すことになり経済の好循環が実現する。この展開は現代のマクロ経済学では合理的期待と呼ばれ、日銀は分かり易く「期待に働きかける」と表現する。一方でその日銀自身が、足元のインフレは一時的と繰り返すことで、消費の先送りを働きかけていることは憂慮される。

日本には、失われた30年から脱却するチャンスが到来したようだ。ここで必要なのは規制強化ではなく、変化を受け入れる勇気だろう。産業革命後も機械を壊すのではなく、使いこなした分野が躍進した。

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