米国株
米国では昨年来インフレが進行、FRBは経済成長を一定程度犠牲にしても、インフレの鎮静化を優先する姿勢を示しており利上げを継続する。但し、金利上昇の影響から一部地銀の破綻など金融不安やリセッション懸念が燻り、加えて足元では債務上限問題が山場を迎えるなど、米国経済は問題山積の状況にある。にもかかわらずS&P500指数は過去最高値まであと600ポイントに迫るなど株式市場は堅調を維持、ここでその要因分析をしてみる。
GDP成長…S&P500指数の予想PERは21倍と過去の経験上は割高であり、年後半の景気減速と株価下落を予想するアナリストは多い。ところで米国の名目GDPは日本とは異なり長期にわたりプラス成長が続き、GDPと株価(S&P500指数)と10年金利の長期推移を示す図1を見ると、株価は単純に経済成長を反映しているだけに見える。因みに50年間の10年金利の平均値は6%、GDP成長率は複利年率6.3%に対し株価の上昇率が同7%となり、株価の上昇率は10年金利とGDP成長率を上回る。つまり年率6%の成長を続ける限り、米株も6%を上回る上昇を続けることになる。但し、1980年代から昨年までの金利低下局面においては、GDP成長がそれ以前に比べ加速したようにも見え、金利上昇局面入りとなった現在、今までとは逆にGDP成長および株価上昇スピードが減速するかもしれない。
過去との比較…現在の金融政策の状況は2005年にFRBが断続的にFFレートを引上げた局面(図2)に似ている。当時は度重なる利上げにもかかわらず長期金利は今回同様もみ合いを続け、加えて株価も上昇したことで、グリーンスパンFRB議長はこの相場展開を謎(コナンドラム)と表現した。但し、利上げ局面終盤には早期の利下げ期待が後退、FFレートと株価上昇を受けて10年金利は当該局面での最高値となる5.1%まで上昇した。一方で株価は利上げ終了を受け、将来の利下げ局面入りへの期待感から上昇がさらに加速した。その後の株価はパリバショックから始まるサブプライムローン問題を受けて下落局面入り、1年後にはリーマンショックで急落した。今回もSVB破綻からクレディスイスの買収劇へと金融不安が拡大、リーマンショックの再来かと身構えたが、現在までのところ不安は沈静化している。
今後、債務上限問題が合意に達し更なる金融不安再燃とならなければ、深刻なリセッション入りは回避されると見込まれる。来年はインフレ鎮静化とともに金融緩和局面入りとなり、政策金利の自然利子率(約2.5%)へ向けた利下げがスタート、2007年と同様さらなる米株の上昇局面到来の可能性もある。
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