日本にバブル到来か

円安効果による海外からの大規模な資金流入などを背景に、日経平均株価もバブル期に付けた史上最高値が意識される水準まで上昇、日本の首都圏マンション価格はバブル期を越えた。ここでバブル期を彷彿とさせる株価と不動産価格の上昇要因と持続性について考えてみる。

⓵海外投資家…近年の不動産価格上昇の立役者。株式においても3月最終週から12週連続で買越し累計買越し額は7.1兆円に達し、この間に日経は20%上昇した。図1を見ると海外投資家は運用巧者のように見えるが、特に存在感の大きいCTAにはインデックス対比アンダーウェートしていた分を後追いで買戻すなど順張りタイプ(上昇時に購入し下落時に売却する)が多く、彼らの動きが株価上昇の主要因とは言えない。

②低金利政策…低金利により資産価格は上昇する。従来、保有資産の多さは株式評価において下落要因だったが、今後は資産、特に土地や株式など償却負担が生じない資産価格の上昇が見込まれ、株価にプラスに働く。特に日本企業は近年設備投資額が少なく減価償却負担も少ないため、低PBR株中心に株価は上昇し易い。

③インフレ進行…日本は資源国ではないため、これまでは世界的な原材料高に対し円高と賃金引下げで対処してきた。一方で足元では内外金利差と貿易赤字の拡大に伴い円安が加速、加えて官民揃った賃上げ大合唱を受け物価は上昇する。まさに従来日本経済にとっての苦難とされた事象は逆回転、30年間のデフレ期間とは逆の現象が起きつつある。金利復活により現金が利益をもたらすこととなり、銀行による成長マネー供給が活発化する。政府はタガが外れたように補助金をバラまくが、インフレにより実質債務負担は減少する。国債を大量保有する日銀にとって、インフレに伴う金利上昇は国債の評価損拡大による収益悪化要因だが、株高による保有ETFの評価益拡大により相殺でき、中央銀行の信用力に裏打ちされた通貨の信用は維持される(FRBは実質的に債務超過とも言われる)。

④イノベーション期待…AIは日本経済のゲームチェンジに繋がる可能性が高い。労働力不足解消に加え、ホワイトカラー革命(生産性の改善)により日本企業の弱点である“万全な事前準備と慎重な予測に伴うビジネスデシジョンの遅さ”が解消される可能性がある。かつてスマホの原型や携帯インターネット、EVの量産化などで商品開発段階では先行しながら商品化に踏み切れなかった経験があるが、このデジタルリテラシーの低さに起因する戦略ミスも回避できるだろう。

こうして並べると今回の株高の主因は②と③の組合せ。今後④へとバトンタッチが進めば良いがインフレが続く一方で期待ほどイノベーションが進まなかった場合、実質GDPは成長せずに名目GDPだけが増加する。そしてドル建てGDP成長率がゼロとなるよう円安と、ドル建てベースで横ばいの株高が進む新興国型経済となる。 

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