日米の消費者物価と政策金利

米国6月の消費者物価指数(CPI)は前年比3.0%、コアCPI(除く食品・エネルギー)は同4.8%とかなり低下したものの、Fedはインフレ率は高過ぎるとして政策金利(FFレート)の5.125%から5.625%への年内2回の追加利上げを示唆する。一方、日本のCPIは同3.3%と既に米国より高く、コアコアCPI(除く生鮮食品・エネルギー)も同4.2%と米国と遜色ない。またCPIの方向性を見ると、米国の下落トレンドに対し日本は上昇トレンドにある。にもかかわらず日銀は世界でも珍しいマイナス金利政策を堅持、なぜ日米で政策金利に5%もの差が生じたのだろうか。

・CPI見通しの違い…Fedは賃金上昇率の高止まりを背景に、当面はCPIが目標値である2%を下回らないと見込む。一方、日銀は足元の賃金上昇に懐疑的で、上昇基調にあるCPIの年内の反落を予想、安定的に目標値の2%を上回る状況にはないとして異次元緩和を続ける。

・賃金上昇率の違い…エネルギーや食品など外部要因による変動が大きい品目を除けば、物価は基本的に賃金上昇率にさや寄せする。(図1、2)米国では足元の平均賃金が前年比4%と高く、放置すればコアCPIは目標水準の2倍4%台で高止まると予想される。一方、日本は現金給与総額が同2.5%とCPI目標値の2%に近く、日銀の予想通り年内にCPIが2%を下回る可能性もゼロではない。但し今年の春闘の最終集計では賃上げ幅は3.58%に達し、これが徐々に賃金上昇に反映されると予想されCPIは下がらないと考えた方が自然ではある。

・経済成長率の違い…名目GDP成長率と金利、および賃金とCPIの動きは長期的には概ね同期する。米国では30年にわたり名目GDP成長率と10年金利は約6%、潜在成長率は2%とされ平均給与上昇率とCPIは約2.5%である。一方、日本では名目GDP成長率はゼロ、10年金利は約1%、潜在成長率は0.5%以下とされ、平均給与の伸びもCPIもほぼゼロ。つまり名目GDPや潜在成長率がゼロ近辺にある限り、CPIだけが安定的に2%を上回るのは、日銀が予想する通り難しいと考えられる。

日本のCPIが恒常的に2%を上回るためには成長戦略が欠かせない訳だが、成長率が改善しない場合は日銀の見立て通りCPIは再び2%を下回り、利上げの蓋然性は低下する。仮に今後、中国景気のさらなる減速、或いは米国のリセッション入りともなれば、世界は景気後退局面入りとなる。そうなると世界的な物価低迷と共に各国中銀は再び利下げ競争となり、日本は失われた30年に逆戻り、マイナス金利のさらなる深堀りとデフレリスクに直面することになる。こう考えると足元のインフレ局面では、将来の金融緩和ののりしろを確保する意味合いからも、政策金利を引上げておきたいところだ。

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