BMI
脳と機械をつなぐBMIの研究開発は国内外で活発になっている。特に高齢化が加速する日本では、今後、病気や障害を持つ人の増加が見込まれBMIの早期実用化が期待される。またBMIを活用したビジネスで先行できれば、技術立国日本の復活にもつながるだろう。まずはBMIとは如何なるものか、確認してみる。
いわゆるBMIには主として以下のような2タイプがある。
・侵襲型(脳に電極を埋め込むタイプ)…精度が高いものの外科手術が必要で患者の負担は大きい。
スイス連邦工科大は、脊髄損傷で下半身が麻痺した患者に脳の信号を読み取る装置を埋め込み、自発的に歩く機能の回復に成功した。臨床研究では、患者の頭骨の一部を切除、直径5㎝のセンサーを頭の左右に1つずつ埋め込み、脳の電気信号を検出。この信号の意味を把握するため、AIに膝や足首を動かそうと考えたときの脳信号を学習させる一方、背骨には身体を動かす電気刺激を脊髄に与える装置を埋め込み、どのような電気刺激で脚を狙い通りに動かせるかをAIに学ばせる。この結果、患者が身体を動かしたいと考えたときの脳からの信号を検知、背中にあるコンピューターで瞬時に分析、脊髄に身体を動かす電気刺激を与えることで、患者は立ち上がったり、歩いたりできるようになった。
・非侵襲型(装置を身に着けるタイプ)…精度は低いが、手術不要で安全性は高い。
国内でも慶応大発のスタートアップが脳卒中などの患者治療やリハビリ技術を開発中。装置は脳波を読み取るセンサーのついたヘッドギアと手を動かすロボットで構成。患者は麻痺した手を動かすようイメージすると、この脳波のパターンをAI(手を動かせる人の脳波パターンを学習済)が分析。患者が手を動かすのに正しい脳波パターンを出せた段階で、AIの指示で腕の筋肉に電気刺激を与え、筋肉の収縮を促す仕組み。今後、リハビリ用の訓練装置を1台数百万円で発売する予定。
ところで新しい技術は、未来を描く漫画や映画の中に登場することがよくあるが、BMIもそうかもしれない。いつの時代も子供に人気がある超人的な能力を持って悪と戦うヒーロー、筆者が子供のころは「仮面ライダー」が流行したが、仮面ライダーは悪の結社ショッカーによって言わばBMIの実験材料となったとも言える。もっとも手術によりバッタ(昆虫)の能力を移植されるが、脳改造の直前で敵のアジトを脱出したのでセンサーは埋め込まれず、侵襲型BMIの未完段階にあたる。非侵襲型BMIとしては「光速エスパー」が思い浮かぶ。ヘルメット付き強化服を身に着け、ヘルメットが脳波を分析して武器を繰り出し、背負ったロケットで空を飛ぶ。近い将来、人間がBMIを活用して特殊能力を身に着け、戦闘に加わる環境が整いそうだが、近代戦の主役は人間ではなく無人機ドローンへと移りつつあり、出番はなさそうだ。一方、エネルギー面では、仮面ライダーは風力発電、光速エスパーは折り曲げ可能な(ペロブスカイト型)太陽電池を動力源としており、半世紀前にすでに再生可能エネルギーを動力源として使うエコ社会を見越していた。
新しい技術は現実的な必要性と共に、未来を見通す想像力から生まれるようだ。BMIの早期実用化を通じ、高齢者や身体障害者の生活環境改善と共に日本のIT先進国の位置づけ復活に繋げられることを期待したい。
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