令和6年度予算
政府は総額112兆717億円となる令和6年度一般会計予算案を閣議決定。過去最大だった5年度の当初予算こそ下回ったものの、2年連続で110兆円を超え、財源の3割以上を国債に頼る厳しい財政状況が続く。ここで令和5年度と6年度予算の歳出・歳入の内訳を表1に示した(実際には秋に毎年恒例の補正予算による積み増しが予想され、歳出総額は120兆円超(5年度は127兆円)となろう)。
表1を見ると歳出では社会保障関係費が全体の34%を占め、金額・割合ともに令和5年度から増加。社会保障以外と物価・賃上げ促進予備費に減額の努力も見られるが、国債費は異次元緩和からの脱出を見込んで利払い費の想定金利を1.1%から1.9%(+0.8%)へと引き上げたことから約2兆円の増額。仮に想定金利がさらに物価目標2%を超える2.7%(=1.9%+0.8%)となっても2兆円程度の負担増に止まると試算され、現状のB/Sから見れば影響は限られ、借金が多く金利上昇は危険と世間が騒ぐほど財政は悪化しない。歳入面では、経済対策の効果もあり過去数年にわたり税収が上振れる。但し、政府は税収増相当分を少子化対策としてばらまく一方、その財源は新規国債増発で賄うなど財政政策はちぐはぐであり、プライマリーバランスの黒字化は当面見込めそうもない。
ここで現代の覇権国である米国の予算(表2)と比較してみる。財政の緊縮化に伴う景気悪化を指して当時のバーナンキFRB議長が使用した「財政の崖」の回避に取組むが、新規国債は31%と日本と同じ。社会保障関係費は社会保険(年金、失業手当等)、メディケア(高齢者医療制度)、メディケイド(低所得者向け医療制度)を合わせると予算全体の43%となり日本の34%より高く見えるが、歳入サイドの社会保障24%と相殺するとその割合は30%に止まる。一方、研究補助金などを含むその他は25%と日本の10%(社会保障以外に含まれる)に比べ多く、経済成長を支援する余裕がある。
ところで今後の日本では、団塊の世代が後期高齢者となるため社会保障費の増加は避けられず、少子化と相まって財政赤字の拡大が予想される。6年度予算では、歳入全体から新規国債発行分と税収から政府が地方に再配分する地方交付税を除いた59.3兆円(=112.1‐17.8‐34.9)を純歳入とすると、実にその64%が社会保障関係費ということになる。対応策としては、社会保障の対象者を減らす代わりに負担者を増やす高齢者雇用の促進や相続税対策の拡充などが考えられる。加えて1980年代に「ゆりかごから墓場まで」と言われた手厚い社会保証制度に伴う財政危機を、増税と歳出削減により乗り越えた英国の制度改革も参考にすべきだろう。
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