新NISAの魅力

今年から新NISAがスタート、株式市場は早くもその購入パワーを見せつけられている。投資家から見たメリットは、税額控除の適用対象である点と適用期間が恒久的であること。この効果を譲渡益と配当および投資手法の視点に分けて考えてみる。

・譲渡益課税(実現利益に対する課税)

経済の鏡とされる株価は、凡そ投資対象国のGDP成長率にリンクして動く。図1は日経平均がバブル前高値を付けた1989年12月を100とした日米の名目GDPおよび株価の足元まで34年間の推移。米S&P500指数の上昇率は複利で年8%とGDPの同5%をやや上回る一方、日経平均株価の上昇率は同0.1%とGDP成長率の0.8%に近く共にほぼゼロ成長だった。仮に米国経済がこれまでと同程度の成長を続けるとすれば、今後20年間でS&P500は約4.7倍の上昇が期待できる。新NISA成長枠の年間投資上限240万円でS&P500のETFを購入すると、為替変動がなければ20年後には1,118万円となり、評価益は878万円。ここで利益確定売りに動くと従来なら譲渡益課税20%が適用され収益は702万円に減少するが、新NISAであれば878万円全額が利益となり魅力的。ところで日本株で同様の試算をすると収益は5,000円にとどまり、税額控除を適用できる新NISAの投資対象として「米国株」を選ぶ気持ちは理解できる。

・配当課税(配当利益に対する課税)

新NISA口座で評価損を抱えた状態で売却した場合、一般口座との損益通算はできないが、税額控除は恒久的に適用可能であり継続保有、所謂「塩漬け」を選択できる。図2は配当率5%の銘柄の配当収入部分を複利計算で積み上げたものだが、株価及び配当利回りに変化がなければ、一般口座(源泉課税適用)の場合は配当収入は119%にとどまるが、新NISA口座(税額控除)であれば165%となり魅力的だ。塩漬けなど長期間保有を想定した場合の配当収入期待から、特に「高配当銘柄」は選好されやすい。                              

・ドルコスト平均法(定期的に一定金額を投資する手法)

「つみたてNISA」はドルコスト平均法の採用を前提とする。図1は1989年12月から毎年、日経平均ETFを年間投資上限額120万円(=四半期毎30万円)づつ購入した場合の評価額(配当除く)の推移。現在まで34年間の累計投資額は4,140万円と新NISA枠(1,800万円)を超過するが、時価は1億450万円と投資額の2.5倍になる。

以上のように、過去の投資経験を新NISA投資に応用すると、「米国株」あるいは「高配当銘柄」を「つみたてNISA」で購入することになる。つまり新聞などで金融リテラシーが低いと批判される本邦個人投資家だが、新NISAにおける投資手法は、実は理にかなっている。

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