タイムマシン投資

かつて「タイムマシン経営」という言葉があった。これは海外で成功したビジネスモデルやサービスを日本に持ち込めば、まるでタイムマシンに乗って未来からやってきたかのようにビジネスを成功へ導くことができるという意味で、ソフトバンク創業者の孫正義氏が命名したとされる。現状の日米欧経済は、コロナ禍で世界経済が一旦リセットされた後、ロックダウンを解除した米→欧→日の順に経済の正常化が進んでいる。従って欧米の動きを踏まえれば日本経済・マーケットの今後の展開が読めるとも言え、勝率の高い投資ができるという意味で「タイムマシン投資」と呼んでも良いかもしれない。

金利…コロナ禍明け後の金利動向を見ると、米欧ではインフレ加速に伴い中銀が利上げを開始、これに2年ほど遅れて日本でも日銀がマイナス金利解除に踏み切った。今後はインフレ進行に伴う追加利上げが見込まれる。利上げ開始後に金利が大幅上昇した欧米債券市場の動きを参考にすると、円金利も相応の上昇が想定される。当面は円債投資は避けた方が良さそうである。

株式…欧米株式は利上げ開始後に調整局面入りとなったことを踏まえると、年初来好調な日本株もこれから頭が重くなる可能性がある。但し欧米株の調整局面は比較的短期間で終了、その後は金融緩和入りを先取りする形で再び最高値を更新する展開だった。従って日本株が調整局面入りしても期間は短いと見た方が良さそうだ。また欧米株の業種別の動きを見ると、大手銀株は堅調だった。利上げ開始後も調達金利は低位安定を継続できたことから結果的に市場金利の上昇が利益をもたらし、一時的に儲け過ぎ批判が出たほど。金利のある世界を迎えた日本においても、大手銀株の堅調な推移が見込まれる。

一方で米国株は先頭ランナーのため、先行きの判断は難しいところだが、タイムマシンに乗って30年ほど前に遡り、現在のAI革命をインターネット革命の再現と見做せば、ハイテク銘柄が有望ということになろう。因みに中国経済は30年前の日本のバブル崩壊を忠実になぞっているように見え、10年単位の長期戦略としては、株式売りと債券買いが有効のように見える。

さて足元の日米欧の主要株価指数は繰り返し最高値を更新、一方で欧米では債券も夏場以降に底堅い動きを続けたことから、投資家にとって2023年は良好な相場環境だった。タイムマシン投資に従えば、先頭ランナーである米国の動きを注視していれば良かったが、足元で状況は変化しつつある。一つは米国経済を追随してきた欧州経済がインフレ鎮静化で米国を追い抜き、利下げへの折返しコーナーで先頭ランナーが入れ替わる可能性が高まった。また日本は長年にわたる日本固有のデフレ経済から抜け出しつつあり、独自性の高い動きが加わることで、タイムマシン投資の見直しが必要となるかもしれない。  

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