賃上げ効果への期待
日経平均株価は34年ぶりに史上最高値更新、都心の地価も約30年ぶりにバブル時の最高値を更新、為替も34年ぶりに154円台の円安をつけるなど、まるで日本経済は約30年の時を経てバブル崩壊の痛手から立ち直ったかのようだ。そもそもバブル崩壊の原因として、不動産融資の総量規制、急激な利上げ、米国による対日貿易圧力、少子高齢化など色々挙げられるが、改めて現状を見ると少子高齢化以外はすでに解決済みだった。にもかかわらず30年近くにわたりゼロ成長を続けた原因としては、企業による人的資源の軽視(賃上げ抑止)とリスク回避の重視(過剰な内部留保積上げ)があると考える。
バブル崩壊以降の企業は研究開発などイノベーションによる収益拡大より、リストラなどの経営効率化を優先し内部留保を拡充、結果として足元で民間企業のバランスシートに占める手元資金は300兆円を超える。一方、将来の経済成長を担うべき若者は、賃金の伸び悩みに加え少子高齢化の進行に伴う社会保障費の負担増に伴い可処分所得が年々減少。以前当欄で問題視した少子化問題も突き詰めると結婚数の減少が原因であり、その主因はやはり若年層の可処分所得の減少に行きつく。
ところで今年の春闘第4次回答集計では全体の加重平均賃上げ率は前年比5.2%、比較可能な1992年以降で額・率とも最高となった。30年ぶりの高水準だった昨年と比べても1.5%の上振れとなり、長年にわたり横ばいだった現金給与総額も3.5%程度への上昇が期待できよう。図2の日米賃金動向を見ると、24年の日本の現金給与総額は、力強い成長を見せる米国の平均時給上昇率に追い付く勢いである。賃金上昇だけで日米経済成長の格差を説明できるわけではないが、日本の若年層も米国のように自己の成果を反映する所得(非年功序列)が期待できるようになれば、バブル期のようにアニマルスピリットを燃やし、結果として日本の労働生産性が向上するかもしれない。過去を振り返れば明治維新当時の日本がそうだったように、近年勃興する新興国でも多くのケースで若者が社会を引っ張り、彼らの所得は社会全体より相対的に高い。若者が賃金上昇により30年間の沈黙を破って再び活躍するようになれば、日本経済がもう一度成長過程に戻ることも期待できよう。
翻って2000年代に急成長した中国だが、足元で若年層の失業率が15%程度まで上昇、若者は収入減と共に労働意欲も減退、少子化も進み物価上昇率はほぼゼロ。まるで1990年代の日本のように見える。つまり解決策として若年層の雇用確保と所得アップが必要と考えられるが、日本の長期ゼロ成長を他山の石として研究してきた中国はどのような処方箋を出すだろうか、注視して行きたい。
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