上昇する東京の住宅価格

米国では予想以上の物価高止まりを背景にFedによる利下げ観測が後退。一方、日本では植田日銀総裁が円安による基調的な物価上昇への影響はほぼないと発言、結果として対ドルでの円安が大きく進行した。その後、植田総裁は円安を巡る発言を軌道修正したものの、円安の流れを大きく変えるには至っていない。そこで円安進行の要因を分析し、今後の行方を占ってみる。

<購買力平価>2国間のモノ価格を一致させる為替レートであり、直接的な評価方法。ビッグマック指数や各アナリスト独自の試算値もあるが、OECDが公表する購買力平価とドル円の推移は図1の通り。為替レートは長期的には購買力平価に収れんする傾向にあるが、乖離状態が長く続くことが多く、短期的な物差しとしては使いづらい。

<貿易赤字と経常収支>通貨の実需に基づく考え方であり、基本的な評価方法。日本の貿易及び経常収支とドル円の推移は図2の通り。ある程度の相関は見られるものの、貿易に伴う為替取引は全体の約1%に止まり、大半は金融取引であり貿易収支と為替レートの連動性は限られる。経常収支に影響する為替取引例として、対外純資産を足元で400兆円超保有しているものの収益を円転せずに現地で再投資したり、新NISAに伴う外貨購入が増加するなど多様で、結果的に為替レートとの相関は低い。

<実質金利差>為替取引の大部分が金融取引に伴うものであれば、その動向は金利差に左右される。但し、アルゼンチンやトルコのように高インフレ下にある国では、保有資産防衛のための自国通貨売りに伴う通貨安圧力がかかり易い。従って金利差は名目金利ではなく、実質金利差(名目金利-インフレ率)が評価基準となる。日米の実質金利差とドル円の推移は図1の通り。足元30年間の相関係数は0.52と高めであり、将来の実質金利差が推定できれば為替レートの行方もある程度予測できる。今後の日米金融政策の展開は、日本は利上げ局面入りに対し米国は利下げ局面入りであり、名目金利差は縮小方向にある。一方でインフレ率は日米ともに緩やかな低下が見込まれることから、実質金利差は縮小が予想され、結果としてドル円は緩やかな円高が想定される。

<為替介入とチャート分析>政府日銀による円買い介入がGW中に2回(計8兆円)行われたらしい。過去の為替介入効果は図1の通り。これを見ると、ほぼすべての介入でトレンドの転換に成功している。因みに為替介入に伴う保有外貨の含み益は凡そ40兆円と試算され、1ドルあたりの利益は58円程度である。通貨当局を為替トレーダーとすれば伝説的トレーダーということになり、逆ポジションで挑むのにはかなりの勇気が必要だ。またチャート上では、足元のドル高160.20円は1990年と共にダブルトップを形成しており、これを超えると1978年の178円までチャートポイントはない。

以上の分析を踏まえると、160.20円で一旦円安局面は終了のようにも見える。  

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