J-REIT

J-REITとは日本における「Real Estate Investment Trust」の略称であり、不動産投資信託とも呼ばれる。投資家から集めた資金を主に不動産に投資する会社(投資法人)が発行する投資証券であり、購入物件から得られる収益(賃料収入や売却益)を投資家に分配する。足元では金利系や株系商品に加え、不動産系商品も投資対象として注目されており、その特徴を分析してみた。

<業務分担>…投資法人自体は運用など実質的業務は行わず、収益の9割以上を分配することにより法人税は免除される。運用は資産運用会社、権利証書の保管や名義書き換え等の事務は事務受託会社、建物や賃貸契約の管理等は資産保管会社がそれぞれ分担する。

<流動性>…一般的に不動産は流動性が低い。一方でJ-REITはクローズドエンド型の金融商品であり中途解約はできないものの、取引所に上場することで株式同様の高い流動性を確保する。

<投資分散効果>…実物不動産へ投資する場合、資金面の制約から投資対象は限られる。一方でJ-REITは小口化により、少額でも多数の不動産への投資が可能でありリスク分散が図れる。

ここでJ-REITにかかる資金の流れを確認してみる。①投資家から資金調達、②銀行借入によりレバレッジを掛けて不動産を取得、③保有物件の賃貸先を確保、④収益から各役割分担先への手数料と借入利息を差引いた残りを分配金として投資家が受取る、という流れになる。またJ-REIT売買高の7割を海外投資家が占めることから、米REIT市場との相関が強い(5年間で0.73)という特徴がある。したがってJ-REITの価格を左右するファクターは、金利、不動産価格、賃貸需給、加えて米REIT市場となる。

次にセクター別のパフォーマンスを分析してみる。図1は過去5年のセクター別J-REIT指数と米REIT指数の推移。住宅系、オフィス系はともに米REITとの相関が強い。またホテルはコロナ禍で急落したのちインバウンド需要の増加により回復基調が続く。図2は過去5年の米国の各セクターにおける代表的なREITと10年金利の推移。米REITは米10年金利との逆相関が強い(コロナ後の相関は-0.9)。また米国ではコロナ禍で出社率が大きく低下したため近年オフィスREITが低迷する。

以上より、J-REIT投資では円金利、米金利、加えて国内不動産市況がチェックポイントになる。足元で円金利は利上げ局面入りが見込まれるが、J-REITの投資レバレッジは2倍程度に止まり、加えて借入の固定金利比率が高いため円金利との相関は低く(5年間で-0.06)影響は限られる。一方で米金利は利下げ局面入りが想定され、米REITとともにJ-REITも需給面からの下支えが期待できる。国内不動産市況は、円安下でのインバウンド需要が続く限りホテル系の堅調が見込まれる。一方で住宅系は、都心マンション価格上昇による資産価値上昇の割に動きは乏しい。これは円金利上昇への警戒感に加え賃貸料引上げの遅れが原因と思われ、この先時間の経過とともに住宅系には見直し買いが期待できよう。  

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