名目GDPと株価

図1~4は、米国、日本、中国、トルコの名目GDPと主要株価指数の推移だが、株価は経済の鏡と言われるように、名目GDPと株価との相関は基本的に高い。そこで、この代表的な4国の経済状況を、相関の観点から評価してみる。

1.米国…名目GDPが順調に成長するのに対し、株価(S&P500)もコンスタントに上昇している。50年間の年率複利を算定すると、名目GDPの6%に対し株価は9%、良好な関係が実現している。

2.日本…名目GDPは1990年のバブル崩壊以降ほぼゼロ成長が続いたが、2012年のアベノミクス開始から名目GDPと株価(TOPIX)は上昇基調に移行。足元では名目GDP最高値更新と歩調を合わせ、株価も34年ぶりに最高値を更新した。異次元緩和に加え、GDP比250%まで膨らんだ財政支出拡大による経済浮揚効果が認められるが、副作用として日米金利差拡大と財政持続性への不安が台頭し34年ぶりの円安となった。このため世界標準の米ドル建で見ると、名目GDPと株価は過去最高値更新には至らない。

3.中国…名目GDPはコロナ禍まで順調に成長し世界第2位となったが、2022年以降は横ばい。一方で株価(上海総合)は2008年のリーマンショック以降ほぼ横ばいが続き、名目GDPと株価の相関も他の3国に比べ低い。この株価低迷にはリーマンショック当時、世界を救ったと言われた積極的な財政支出(当時のレートで57兆円)が名目GDPを押し上げた一方、生産性の低い分野への資金投入が企業業績の向上に繋がらなかったことが背景にあるとも考えられる。また足元の経済は、不動産価格の下落、少子高齢化と若年層の大量失業発生及びデフレ経済の拡大など、日本化と揶揄される状況にある。名目GDP成長も1990年以降の日本と同様横ばいとなり、経済の長期停滞を予想する向きもある。

4.トルコ…コロナ禍以降の名目GDPの成長は年率52%と高く、株価も年率110%で上昇している。この背景には、名目GDPを「実質GDP+インフレ率」に分解すればわかる通り、物価の高騰がある。コロナショックによるサプライチェーン問題やロシアによるウクライナ侵攻に伴う食糧・エネルギー価格上昇を発端として、物価は急上昇。一般的な経済学に沿えばインフレ対策として利上げを行うが、エルドアン大統領は高金利がインフレの原因として利下げを中銀に要求。結果としてインフレは却って加速したため、昨年6月に中銀は利上げへと舵を切った。足元では物価高の勢いは弱まりつつあるものの、6月のインフレ率は前年比で71.6%と依然として高い。一方で高インフレの影響で通貨安が進んでおり、米ドル建ての株価は長期間ほぼ横ばい、海外勢の投資対象として魅力的ではなかった。

こうしてみると、長期間に渡りGDP成長と株価上昇が続く米国がお手本であり、日本においては財政支出や企業活動が効率よくGDP成長に結び付くかがキーポイントになる。一方でトルコのように通貨安が拡大すれば、新興国でよく見られるスタグフレーションに直面することになるため、財政規律の確保と金利・物価動向への配慮が必要だろう。

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