日米金融政策
7月30,31日に日米の中銀による金融政策会合が予定されている。日銀政策決定会合では量的引き締め(QT)に加えて利上げの可能性も指摘される。一方で米国FOMCでは政策金利の据え置きが読み筋だが、一部には利下げ期待もある。ファンダメンタルズ等を見ながら日米の金融政策を予想してみる。
日本…図1の消費者物価指数(CPI)とコアコアCPIの前年比推移を見ると、6月のCPIは前年比2.8%と高止まったものの、政府による電気・ガス補助金の再開で8~10月分だけは再低下が予想される。補助金に伴う変動を除いた本来のインフレ動向としてコアコアCPIを見ると、同2.2%と再加速しており核となる物価は上昇基調、21か月連続で2%超と日銀による金融正常化への舞台は整う。また年初来の円安進行に伴う政府による5兆円規模の為替介入観測、加えて岸田首相、河野デジタル相、加えて茂木自民党幹事長も利上げを含む金融正常化に前向きスタンスを表明している。7月の会合では、国債買入れ額の月間3兆円程度への2年以内の減額は既定路線。一方で利上げは、8月以降のCPI低下や9月の自民党総裁選への影響を踏まえ、市場が織り込む0.25%への利上げ確率は4割程度に止まる。筆者は、最近の日銀は政策修正を事前に市場に織り込ませることを考慮し、今会合では9月利上げのアナウンスに止めると予想。
米国…総合CPIは年初に再加速したものの足元では鈍化、FRB目標である2%の年内達成が視野に入る。一方で米経済は減速基調にあり、労働関連指標にも息切れが見られる。FRBは物価の安定と雇用の最大化を政策目標としており、パウエルFRB議長はインフレが目標2%を上回っていても雇用環境が悪化すれば利下げに動くとしている。図2は総合CPIとコアCPIの前年及び前月比の推移だが、6月の総合CPIは前年比3%と減速、前月比は▲0.1%と4年ぶりのマイナスとなった。また雇用環境は6月の失業率が4.1%と3年半ぶりの高水準、加えて景気に対し先行性のあるISM(全米供給管理協会)非製造業景況指数は6月が4年ぶりの低水準となり、次々回9月のFOMCでは利下げ条件が整いそうだ。一方で11月の大統領選を控え年末に向け政治的な不安定さが高まることが予想されることから、市場は7月の早期利下げ開始を1割程度織込む。筆者は7、9月は五分五分と見る。
7月末の日米中銀の政策判断が注目されるものの、将来に向けては日銀の利上げとFRBの利下げは既定路線であり、当面は円金利の上昇、米金利の低下が予想される。結果的に日米金利差の縮小が見込まれること、加えて日本政府による円買い介入や日米両政府要人による円安けん制発言を反映し、当面は円高進行が見込まれる。
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