日本株はブラックマンデーの韻を踏むのか
政府による円買い介入と日銀による追加利上げ決定に加え、パウエルFRB議長の9月利下げ示唆を受け、日米金利差縮小観測から円高が進行、米株の下落も手伝い、金利敏感株や輸出株を中心に日本株は大幅に下落、8/5の下落幅は4,451円と過去最大、日経平均株価の高値からの下落率は▲25%となった。
・下落要因(トリガー)としては、日銀の利上げと利上げ継続の示唆が挙げられる。因みに米国が利上げ局面入りした2022年に米株は半年以上かけて高値から▲25%下落したが、今回の日本株は1か月で既に▲25%下落。米株の動きを参考にすれば、利上げショックはほぼ消化済みともいえる。
・下落要因(ファンダメンタルズ)としては、円安終了が指摘される。図1日経平均株価と円レート(JPY)、および日米2年実質金利差の年初来推移。実質金利差を見ると年初から上昇し7/1に4.19%をつけた後、日銀の金融政策変更の影響もあり下落基調に転じた。これに歩調を合わせるようにJPYは年初から円安が進み7/3に161.95円をつけた後、円買い介入の効果もあり円高へとトレンド転換、足元では年初のレベルまで戻した。そして円安進行に歩調を合わせる形で日本株も年初来上昇、7/11に史上最高値を更新したが、その後下落に転じ足元では年初レベルまで戻した。つまり今年入り後の株価上昇は、円安の影響(円安バブル)に寄るところ大で、円高への転換によって下落したと見ることが出来る。
さてここで今後の日本株の展開を考えてみる。今回の日本株急落は、リーマンショック(2008年)やコロナショック(2020年)など個別事象に伴うケースとは異なり、為替安による株価上昇がスパイラルな損切により短期間で急落に転じており、ブラックマンデー(1987年)に似ている。図2はブラックマンデー前後のNYダウ、ドル、FF金利の動き。1985年9月22日のプラザ合意により米ドル安となり輸出関連株中心に株価は上昇、その後ドル安進行が停滞し1987年10月19日に米株に売りが殺到、1日で22.6%下落した。つまりブラックマンデーはドル安バブルの崩壊だったと考えられる。今回の日本株の急落も、大流行していた円キャリー取引と日本株買いが円安終了に伴い巻き戻されたとみれば「円安バブルの崩壊」とも言えよう。
ところでブラックマンデー後の米株の動きを確認してみる。FRBは株価急落に伴い1%の緊急利下げを行った後、インフレ鎮静化のため利上げを再開、1989年2月まで利上げを継続し7%まで引上げた。一方米株はその間徐々に上昇、利上げ停止とほぼ同時にブラックマンデー前の水準を回復した。つまり株価が再び最高値を更新するまで約2年かかったことになる。マーク・トウェイン(小説「トムソーヤの冒険」の著者)は「歴史は繰り返さないが韻を踏む」と言ったが、ブラックマンデー同様に日本株が再び最高値を更新するのは、日銀の利上げ終了が視野に入る頃となるかもしれない。
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