石破内閣発足
自民党の石破総裁は、10/1の衆参両院本会議での首相指名を経て第102代首相に就任、同日夜に組閣し石破内閣を発足させた。新たな党執行部と閣僚の顔ぶれから挙党体制構築に苦心した形跡がうかがわれる中、党最高顧問に就任した麻生氏が執行部の集合写真撮影を拒否するなど、一部でわだかまりも残るようだ。但し、最大派閥として君臨してきた旧安倍派の閣僚はゼロとし、政治と金の問題に対して人事面でけじめをつけた形。一方で解散総選挙の時期について、当初、総裁選の段階では予算委員会での与野党間での議論を尽くしてからと主張していたものの一転、首相就任から戦後最短となる8日後とするなど、首相就任後に主張や戦略に変化もみられる。そこで改めて、石破政権の掲げる政策を経済、財政、金融、防衛に分けて確認してみる。
経済政策…最低賃金を2020年代に全国平均で1,500円へ引上げ。その上で地方創生交付金を倍増させ、企業の地方進出を後押し、2026年中に「防災庁」を創設し頻発する自然災害に対応など、地方への機能と財政資金の分散を推進する。効率性の観点から経済成長に有効なのかは疑問だが、基本的に岸田政権が推進した新しい資本主義、デフレ脱却と賃金上昇を伴うGDP成長が続くと期待される。
財政政策…低所得者向け給付金およびエネルギー補助金など物価高対策は継続が視野。一方で一部企業への法人税増税、高所得層および金融所得への増税に意欲。当初は財政健全化路線を目指すと見られていたが、金融所得課税に関して新NISA制度は変更しない方針を示した上、岸田政権ゆずりのバラマキ政策の継続を示唆するなど、当面は財政赤字拡大も予想される。
金融政策…当初は金融正常化と日銀の独立性尊重を目指すとしていたが、植田日銀総裁との会談後に政府として指図する立場ではないとした上で、「個人的には現在、追加利上げする環境にあるとは考えていない」と発言。高市氏のようなアホ呼ばわりではないものの、日銀に牽制球を投げた。総裁選直後の利上げ容認による石破ショックを踏まえ、衆院選に向けた政策アピールと思える。植田総裁も「見極める時間は十分にあると」しており利上げ継続方針は変わらないが、タイミングは後退した印象。
安保政策…日米地位協定の見直しや日米安保条約の非対称性の解消、米国の核持ち込みも検討課題に掲げる一方、アジアでの集団防衛の仕組み創設も視野に入れる。軍事的圧力を強める中露を念頭に、防衛力や抑止力の向上を目指すが、米国の理解を得た上で実現するハードルは高い。特にアジアにおけるNATOのような集団防衛体制の立ち上げには、各国における友好国の相違など実現には相当な困難が伴う。
石破氏に対する世論支持率は比較的高かったにもかかわらず、首相就任後に掲げた政策に当初とは異なる部分が幾つかあるせいか、新聞各社の緊急世論調査による内閣支持率は50%前後と岸田政権発足時を下回る。ところで上記政策の市場への影響を俯瞰すると、デフレ脱却と賃金上昇路線は継続、岸田政権を継承し当面は財政健全化より財政支出拡大が見込まれるため、株高が見込まれる。また財政赤字拡大の継続に加え、追加利上げのタイミングは後退するため、当面は円安基調の継続が想定される。更に金融正常化路線は不変のため、中短期金利は低位安定と凡そ現状維持となりそう。一方で財政赤字拡大および円安と物価上昇の組合せは、トルコ経済やトラスショックを想起させるため、超長期金利は上昇する可能性がある。尚、バラマキ政策が長引けば、物価高と急激な円安、株安へと繋がるリスクを内包することには注意が必要だ。
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