なぜ株式投資をするのか

岸田政権による「貯蓄から投資へ」の掛け声とともに、新NISAも手伝い日本国民は株式投資を積極化、日経平均株価は34年ぶりに最高値を更新した。ここで株式投資の必要性について今一度考えてみる。株式投資の意義には、①収益狙い②対象企業の応援③将来の資産形成、などがある。ここで①は短期売買で投機、②は出資に近く、いわゆる投資は③の資産形成が主な意義になろう。資産形成の目的は各人各様だが、主に住宅購入資金、子供の教育費、老後資金の確保など、予想される将来の出費に備えて資金を作ることであろう。

金利のない世界…バブル崩壊後のデフレ経済下では、物価は下落基調にある一方で金利は概ねゼロ。購入タイミングを先延ばしした方が費用対効果が良く買えるため、人々は消費を抑制しつつ金利はつかないものの預金の積み上げを図る。このような環境下、国内企業の収益は伸び悩み、株価も下がり易く株式投資では損失発生の可能性が高まる。一方で預金を保有すれば、将来的に購入できるモノは増えることからCash is kingであり、株式投資の必要性は低い。従って人々の金融資産としては、預金およびそれに準ずる公社債などの割合が増える。

金利のある世界…物価が高まると金利も上昇する。但し、大抵の場合は物価上昇率より預金金利の方が低く、預金に依存すると将来的に買えるモノが減ることになり、人々は購入タイミングの前倒しに動く。国内消費が盛り上がり企業の成長性は高まるので株価も上昇する。一方で物価が上がると住宅価格や学費も上昇し将来的に必要となる資金も増加するため、株式が投資対象の主要な選択肢に挙がる。ここで投資銘柄を考える場合、企業の破綻リスクを考慮し、よく知っている企業として勤務先の自社株買いという方法もあるが、長期投資を前提とすれば就職と同程度のリスクテイクということにはなる。但し、倒産となれば収入も資産も同時に失うことになるので、出来れば分散投資の方が望ましい。逆に言えば、インデックスファンドを購入すれば、基本的に倒産リスクを低減できるので、例えば日経平均ETFなども投資対象として良いだろう。

ところで金利のある局面で投資対象を株式とする場合、基本的に配当利回りが預金金利(できれば物価上昇率)より高ければ株価は上昇しなくてもよく、(予想配当利回り-将来金利)÷インプライドVol(*)の高い銘柄を選ぶべきだろう。このシャープレシオと言われる式を参考にすると、分子の(予想配当利回り-将来金利)が高いか、分母のインプライドVolが低い銘柄を選ぶことになる。但し、予想配当は企業業績を推定する必要があり難しいため、既に配当利回りが高く、加えて配当余力が大きい株式(低PBR株に多い)が購入対象に相応しいだろう。尚、低PBR・高配当株は相場下落時に下げづらく、Volも低くなる傾向があることも投資対象として選好される理由の一つ。折からの東証による低PBR企業への改善要請もあり、利上げ開始と共に低PBR株が買われたのも頷ける。

以上、金利のある世界において必要とされる株式投資について述べたが、足元では物価上昇に伴い株式以外にもマンションなどの不動産や金などのインフレヘッジ資産も買われる。このような行動が更に物価上昇を加速させるため、インフレはスパイラルに加速し易いとされる。つまり株価の堅調推移を前提とすれば、インフレの高まりと金利水準のバランスから株式投資の必要性が決まることになる。

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