トランプ2.0と日米欧株式

今回の米大統領選では共和党候補のトランプ氏が勝利。また上、下両院も共和党勝利でトリプルレッドとなり、第2期トランプ政権の目指す政策(トランプ2.0)が成立し易くなった。ここで大統領選の結果を受けた日米欧の株価動向を見てみる。

図1は足元6か月間の日米欧の株価推移(5/22=100)を示したもの。これを見ると、米国株(S&P500)は、AI革命とインフレ鈍化を支えに過去最高値を更新しつつ堅調だったものの、7月の雇用統計ショックで一時的に下落。その後は堅調さを取り戻し、大統領選でのトランプ氏勝利を受け上昇を加速、再び過去最高値を更新した。一方の日本株(TOPIX)は、デフレ脱却と円安進行を好感して米国株と遜色のない動きだったものの、米雇用統計ショックに伴う米株下落と急激な円高を受け8月5日に過去最大の下落。その後は国内政局の不安定化に加え、米大統領選の結果を受けもみ合いが続く。欧州株(EURO STOCK50)は、中国景気減速の悪影響で低迷する独経済を反映し日米株に比べ低調に推移。その後は独仏政局の不安定化や米大統領選での対中政策強化および関税引上げやNATO軍事費の支出引上げ要請などを掲げるトランプ氏勝利に伴い下げを加速した。

 今後の米国株はトランプ2.0政策の進捗次第ではあるが、インフレ鈍化のもと金融緩和が続くと予想されるうえ、公約通り法人税や所得減税など10年で7.5兆ドルとも試算される財政支出拡大となれば米国株には追い風となろう。加えてAI革命はまだ緒に就いたばかりで、今後もハイテク企業の収益拡大が続けば、ナスダック指数は年初に当欄で予想した22,000ポイント到達も視野に入る。但し、関税引上げ、減税、移民削減は物価上昇要因であり、タイムラグを持ってインフレ再燃となる可能性が高い。図2は2016年11月のトランプ氏の第一回当選直後から4年間の日米欧株価推移。これを見ると、当選後は政策期待から、翌年は税制改革を好感し米国株は上昇したものの、2018年以降は関税引上げに伴う対中貿易摩擦の激化などから株価は低迷した。今回も関税など米国ファースト政策が行き過ぎれば、米国株は下落に転じる可能性がある。

一方の日本株は、トランプ氏が関税引上げに加え駐留米軍費用の負担増など日本経済にとってネガティブな政策を列挙しており、上値は重くなりそうだ。また欧州株は、関税やNATOの軍事費問題などは日本と構図は同じだが、加えて中東情勢の激化やウクライナ支援費用の増加、更にウクライナ紛争におけるロシア有利での幕引きも予想され、日本以上にトランプ2.0への警戒感は強く、当面下落基調が続きそうだ。 

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