ゲーム理論で紐解くトランプ政策
トランプ米次期大統領は、外交面で強硬策を取るのは中露に対してだけではなく、カナダや欧州諸国など西側友好国に対しても、容赦のない関税や領土買取などの脅しや要求を突きつけており、世界中が身構える。但し、第1期トランプ政権を振り返ると、当時も経済的敵対国だった中国だけでなく、日本を含む友好国に対しても関税や防衛費増額などの脅しや要求を突きつけた。当欄では2018年4月に当時のトランプ政策をゲーム理論を用いて分析、予測したが、今回も同様の手法で検証してみる。
ゲーム理論の世界では、代表的な「囚人のジレンマゲーム」(共同で犯罪を犯したと思われる囚人2人の協調・裏切りの仕方)における「無期限繰り返しゲーム」(囚人が司法取引の繰り返し回数を知らない)の戦略を競うイベントが行われており、それまで最強とされてきた「しっぺ返し戦略」を2004年に「主人と奴隷戦略」が破った。ここで「囚人のジレンマゲーム」における2つの戦略を解説すると、
□「しっぺ返し戦略」
・1手目は協調を選択する。
・2手目以降のn手目は、(n-1)手目に相手が出した手と同じ手を選択する。
例えば2手目の場合、1手目に相手が協調を選択したら協調、裏切りを選択したら裏切りを選択する。
□「主人と奴隷戦略」
予め決めたパターンで協調と裏切りを5~10回出し、相手が自分のチームの仲間か否かを判断する。
・相手が仲間ではないと判断された場合、
常に裏切りを出すことで、可能な限り対戦相手の点数を下げようとする。
・相手が仲間であると判断された場合、
自分が奴隷(相手が主人)の場合は、常に協調を出す。
自分が主人(相手が奴隷)の場合は、常に裏切りを出す。
2018年4月の当欄分析では、トランプ氏はそれまでの「しっぺ返し戦略」から「主人と奴隷戦略」に変更するのではと予想したが、今回はその様相がさらに強まっていると考えられる。今回のトランプ政権は1期目とは異なり、トランプ氏の突飛な行動を制止するメンバーが周囲に少ないことも状況を過激化させていると思われる。
さて、「主人と奴隷戦略」の問題点として、2004年のゲーム理論のイベントでは成績上位3位を「主人と奴隷戦略」の主人が独占したものの、成績の下位には奴隷のケースが多数あったことが挙げられる。つまりゲーム理論的には、第2期トランプ政権で米国の要求に隷属する国は、貧乏くじを引く可能性が高いということになる。したがって、友好国であっても米政権の言いなり(奴隷の役割)となることは避け、是々非々の判断により時には要求をはねつける覚悟(主人の役割)が必要だ。ここで「主人と奴隷戦略」では主人1に対し奴隷60が必要との分析もあり、隷属国の減少は米国一人勝ちを阻止することになる。
一方、「しっぺ返し戦略」の進化系として、裏切られるまで協調、裏切られた時点以降は最後まで裏切りという戦略が有効との研究もある。ゲームの勝者となるためには、この戦略を踏まえ、西側友好国同志でお互いに裏切られるまで協調連合を組むという戦略が有効かもしれない。
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