円高

トランプ政権は公約に掲げた関税政策を漸進的に発動。従来、米国による関税政策は米ドル高に繋がるとされたが、足元ではどちらかと言えば米ドル安の動きとなっている。ここで改めて米ドル・円(JPY)相場を考えてみる。

為替動向は人気投票にも例えられなど、購買力平価以外ではなかなか理論値すら導き出せないものの、キャリートレードの収益期待値となる2通貨間の金利差との連動は目立つ。図1は日米の5年国債の金利差とJPYの20年間推移を示したもの。この金利差とJPYの相関係数を計算すると0.75と連動性は相応に高く、JPYの動向を占うには日米の5年金利を予想するのが有効と考えられる。

米金利…Fed にはデュアルマンデート(2つの目標)として「物価の安定」と「雇用の最大化」とが課せられている。物価については、米CPIは足元で前年比3%まで上昇しているが、弊社試算では今後鎮静化を予想する。一方で雇用について、失業率は緩やかな悪化傾向にあるが、今後マスク氏による政府職員削減の影響で一時的に失業率の上昇が加速する可能性がある。以上から、Fedは中立金利に向け更に年内0.5%(=0.25%×2回)の利下げに踏み切ると予想する。

円金利…日銀にもデュアルマンデートがあり、「物価の安定」と「金融システムの安定」を目指す。ここで物価については、1月の総合CPIはエネルギー関連補助金縮小の影響で前年比4%まで上昇、欧米を追い越しブラジル(同4.56%)に迫る勢いだ。今後、補助金停止となれば、急激な円高や原油安などが起きない限り1年間はCPIの高止まりが予想される。以上から、日銀は中立金利に向けて参院選前と年末の年内2回(=0.25%×2回)の利上げに動くと予想する。更に日本の金融政策は欧米を後追いしており、イールドカーブは2022年の利上げ局面における欧米同様、利上げ局面が続けば一時的に逆イールドに向かう可能性がある。その場合、5年金利は現状の1.0%から超長期と同レベルの2.0%まで上昇することになり、上昇幅は1.0%となる。

 以上を踏まえ、5年金利が米国で0.5%低下する一方、日本で1%上昇すると仮定した場合、日米金利差は1.5%縮小することになる。ここで、日米5年金利差とJPYの回帰分析(JPY推計値=日米5年金利差×12.4+82.8)を用いて、金利差の1.5%縮小を反映したJPYを推計すると132円となる。一方でチャート的には、図1に示したように今回の円安局面(2021/9~2025/7:110→160円)の半値戻しは135円となる。今後、本格的な円高局面入りとなれば、130円台まで考慮に入れておくべきだろう。

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