都心の住居価格が高騰中

昨年東京23区で売り出された新築マンションの平均価格は1億1千万円と2年連続の1億円超え。今年3月には一部高額物件の影響で上昇率が前年比19.7%とさらに加速、いったい誰が買っているのかというと、外国人による購入が増えているという。円安の影響もあり、これほど価格が上昇してもなお、NYやロンドン、北京などに比べると割安に見えるようで、特に最近は中国人による購入が目立つらしい。そこで、実際に外国人の購入割合が3割以上とも言われる東京オリンピック選手村跡地のタワーマンション抽選会場に行ってみた。当該マンションのタワー棟は倍率10倍超えが珍しくない中、抽選会場では結果を聞いて去っていく日本人家族をしり目に、会場の前方数列を中国系業者が終始独占、抽選結果を次々と携帯電話で外部に伝え続けた。もはや組織的なマンション抽選ビジネスが行われており、応募は1名義当たり3室までというルールは形骸化、日本人が家族単位で申し込んでいては太刀打ちできない印象だ。売出価格の設定は、倍率が示す通り周辺物件と比較すれば割安だが、大量に購入してどうするのかというと転売、或いは賃貸に回すらしい。中国本土は政府の締め付けが激しく、移住先としては安全かつ物価の安い日本が人気で、居住せずとも別荘、もしくは万が一の逃避先として購入するそうだ。加えて、今の中国は若者の雇用環境が悪化しており難関大学を出ても就職先の確保に苦労するため、教育レベルが高く且つ安全で就職も売り手市場が続く日本の大学を受験、入学後の子息用住居として高級マンションを購入するという。当然、有名大学の入試試験における中国人比率も上昇している。

また税制面でも日本の不動産は外国人にとってメリットがある。日本人の場合、購入後5年未満の住居売却時には譲渡益に約40%課税される。一方で外国人の場合、住居売却時に伴う譲渡益は1億円未満であれば無税である。さらに中国は相続税や贈与税がないため、1億円以上の物件であっても同じ中国人を相手に簿価で売却し、不足金額を贈与という形で受取る手法を用いれば、グレーではあるが譲渡税を回避できるらしい。相続税や贈与税がない国は他にもインド、マレーシア、シンガポール、オーストラリアなどがあり、米国も基礎控除が15億円と、庶民レベルでは無税に等しい。つまりこれら国籍の人が日本の住居を購入し、その後も外国人同士間で売買を続けて日本人に売らなければ、日本国内の人気不動産物件の所有者は外国人が増えるだろう。所有コストを見ても日本の固定資産税は他国に比べ比較的低く、急いで売却する理由は無い。賃貸に出した場合の賃料収入にかかる所得税も、不動産所有者が外国人の場合は原則として賃借人が代理支払者となるので、相続税支払い時に手放す日本人に対し、外国人は孫の代まで持っていられる。

さて、このような外国人購入による地価上昇はロンドン、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなどでも見られた。因みにオーストラリアでは、住居を買えないとの国民の不満が募り外国人の購入を規制したが、物件の売却には至らず地価は高止まる。このような事態を参考にすると、日本では国民の不満もまだ聞こえてこないので、都心の住居価格上昇は続きそうだ。一方、地価上昇に対し賃貸家賃の上昇は追いついておらず、新築マンションの場合、賃貸の裸利回り(管理コスト、税金支払い前)は3%以下も珍しくない。これは長年のデフレ体質が染みついて、物件の貸方借方ともに賃料引き上げ経験が乏しいからと思われ、利回りの低さから住宅系REITの価格も低迷する。但し、最近では地価上昇と共に賃料も徐々に上昇しつつあり、値上がり前に購入した物件比率の高いREITは、今後、賃料と地価両方の上昇の恩恵が期待できよう。高額都心住居を買わずとも、割安な住宅系REITは購入対象として検討しても良いかもしれない。   

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