日本は物価高対策で物価上昇

内閣府による世論調査では、政府が力を入れるべき事案として「物価対策」を挙げた割合が66.1%とトップだった。それを受けてか、石破内閣は物価高対策として現金給付に加え、消費税減税やエネルギー補助金の検討を表明。但し、過去において現金給付は、その殆どが貯蓄にまわったとの分析もある。

・消費税減税:今まで物価高対策として消費税を下げた例はないものの、消費税増税時を分析することでその反対の効果を推察できる。図1は直近35年間の消費者物価指数と日経平均株価および原油価格の推移で、過去の消費税増税のタイミングは①1989年4月、②1997年4月、③2014年4月、④2019年10月。デフレ脱却を目指して消費税を上げたわけではないが、消費税で物価を変動させられるかという視点で図を見ると、②や③で物価上昇が顕著だが、効果は前年比で文字通り1年しか続かないようだ。一方で、消費税は社会保障費に充てられる。2024年度の社会保障給付費は140兆円(うち年金56兆円、医療49兆円)。現役世代から健康保険を含む社会保険料など60兆円をかき集め、不足分80兆円に対し消費税収24兆円を含む税収50兆円が社会保障費に振り向けられるが、残り30兆円は国債発行で賄う。つまり消費税をゼロにした場合、代替財源として国債増発しか見当たらない。GDP比2倍を超える借金を抱える日本政府がさらに新規国債発行倍増となれば英国のトラスショックのような日本売りを誘発するリスクがある。減税は恒常的な物価下落効果が望めない一方でインフレ促進策でもあり、加えて円安となれば、日銀が指摘する第1の力として物価上昇圧力が強まろう。そして過去の例を見るまでもなく、消費税の再引上げは支持率が低い政権にとり至難の業であり、国債増発が続くことになろう。

・エネルギー補助金:日本は資源を持たず、原油価格上昇はそのまま物価上昇に繋がる。その悪影響の緩和策としては、為替の円高誘導、原油の消費抑制などが挙げられる一方、エネルギー補助金は消費促進効果があるうえ、原油高による海外への円支払い増加は円安圧力となり、原油高スパイラルとなる。つまり、補助金策は物価高に対し全く逆の効果であり、更に代替エネルギー開発の停滞にも繋がる。また、露によるウクライナ侵攻以降、政府はエネルギー補助金に18兆円を費やしたが、物価上昇を抑える効果は図1を見る限り消費税同様1年程度、補助金を停止した足元ではむしろ反動で物価は上昇する。

現状の為替動向は、トランプ政権の過激な政策を嫌気したドル売りに対し、物価高対策と称し国債増発でバラマキを続ける円売りの戦いが、絶妙なバランスを保っている状態ともいえる。今後は、日本がバラマキ戦略と日銀による利上げ先延ばしとなるならトルコのように通貨円安と物価高進行、逆に緊縮財政と早期利上げとなるなら円高と物価安定が予想される。

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