近代戦争
13日にイスラエルは「ライジング・ライオン作戦」を開始、戦闘機約200機が作戦に参加し、イランの核関連設備および軍事施設100か所以上を空爆した。これに対しイランは報復攻撃に動き、370発以上の弾道ミサイルを発射し30発が着弾、100機を超える無人機ドローンは撃墜された模様。一方で、イランの重要な核施設(ファルドゥ)は攻撃に備え山岳部の地下80m程度にあるとされ、今回は破壊を免れたようだ。このような地下基地の攻撃には、米軍が開発した特殊爆弾(バンカーバスター)と、更にこの爆弾は重いため(13.6t)輸送にも米ステルス爆撃機B2が必要であり、イスラエルは米国の参戦を求めざるを得ず、米国の軍事技術の独占的優位性が分かる。今回の中東紛争では最新爆弾とともにドローンが重要な役割を果たしており、イスラエルの攻撃目標にはドローン工場も含まれた。イランは軍事用ドローンを大量に生産しロシアへも輸出しており、今後ロシアのドローンが不足する可能性すらある。
ところで軍事用ドローンは、ウクライナ軍が1日に展開したシベリアなどの航空基地に対する大規模攻撃にも使われた。「クモの巣」と名付けられた作戦で、ロシア国内の4か所の航空基地をドローンが同時に攻撃、10機を超える戦略爆撃機が破壊された。ロシアが代替の爆撃機を調達することは難しく、今後ウクライナ攻撃に影響が出る公算が大きい。また戦費的にみると1機当たり約100万円のドローン約100機で計1億円がロシアに約1兆円(70億㌦)の損害を与えたことになり、コスト対比では約1万倍の戦果となる。しかも兵士に伴う人的リスクもなく、近代戦争においてドローンの重要性は急上昇中だ。
ウクライナでは2024年に国内企業200社以上が150万機のドローンを製造、25年には250万機の生産を計画。また英はウクライナに25年にドローン10万機(24年の10倍)の供与を計画する。一方のロシアも24年に150万機以上を配備し、25年の生産機数は200万機を上回る模様。またイランが開発した無人機ドローン、シャヘドの改良機を月当り2,000機生産しており、今後は5,000機まで増やす予定だ。更にロシアはドローンの生産を北朝鮮に委託する計画もあり、そうなれば北朝鮮は自国でのドローン配備を積極化し、韓国の防空能力を凌駕する攻撃能力を持つ可能性すらあり、世界の軍事バランスが変化する。
現在は無人機型のドローンに注目が集まっているが、今後は以前当欄で紹介した機関銃を搭載した犬型ドローンのように、地上戦においてもドローンが重要な役割を担う可能性がある。もはや最近の戦争では兵士同士の戦いを前提とした兵力確保が戦力を左右するのではなく、ドローンなど兵器の開発技術と生産力が戦力を決めるものへと変貌している。果たして世界における安全保障の枠組みは、その変化に追いつけるのだろうか。
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