中国の最新医療
中国における最先端医療分野での積極的な研究開発の結果、これまで優位性を築いてきた日米欧などが競争力を失う恐れがあるとの憶測が広がっている。
・創薬では、AIを活用してゲノム(遺伝子情報)など膨大なデータを解析し新薬を開発する時代が到来しており、世界中から様々なゲノムデータをいち早く囲い込んだ者が国際的主導権を握るとされ、中国は非常に有利な立場にある。例えば、アプリ利用で高いシェアの中国では、スマートフォンユーザーの2人に1人が健康アプリを利用しているとされ、国家情報法で企業や個人に国の情報活動への協力を義務付けており、国がデータ提供を求めれば企業は拒否できない。これまでに表明された中国によるゲノム編集などへの投資額は11兆円を超え、すでに抗がん剤や抗生物質などの原材料製造で世界で圧倒的な競争力を持つ。
・臨床研究では、中国・安徽医科大学が5月、遺伝子改変したブタの肝臓を世界で初めて患者の治療用に移植した。この患者は重い肝臓がんを患っていたが、がんを含む肝臓の右部分を手術で除き、代わりにブタ肝臓を移植、肝機能は正常に戻り自由に動き回れるようになったとしている。また、2018年には中国・南方科技大学が希望者を募ってヒトの受精卵にゲノム編集を実施し、エイズウィルスに対し抗体を持つ双子の「ルル」と「ナナ」という女の赤ちゃんが産まれたと発表。利用したのはクリスパーキャスナインという手法で、DNAを切断する酵素と、狙った配列を特定するためのRNAの断片を使用。DNAを切り貼りする従来型の遺伝子組換え技術と比べると数万から数十万倍の精度で狙った遺伝子を改変することができるとする。一方で受精卵の遺伝子を改変すると、世代を超えて影響する可能性があると考えられており、英では受精卵をゲノム編集する基礎的な研究は認めるものの母体に戻して子どもを誕生させることは制限される。米でもゲノム編集をヒトの受精卵に行う研究に連邦政府の資金を投入することを禁じており、独、仏、日に加え中国でもゲノム編集した受精卵から子どもを誕生させることは禁止されている。にもかかわらずチャレンジするところは、いかにも中国といった印象だ。
・ウィルス研究も盛んで、武漢ウイルス研究所の研究者らが今年2月、人に感染する可能性がある新たなコロナウイルスがコウモリから検出されたとする論文を発表した。COVID19(新型コロナウイルス感染症)の発生源と疑われている中で、このような発表がなされたことは驚きである。COVID19に関しては、米下院特別小委員会が昨年、武漢ウイルス研究所の事故が起源とする最終報告書を出した。この中で「COVID19は自然界には存在しない特徴を持っている」とか、「中国の武漢にある研究所では不十分な安全レベルで研究を行っていた」などと記載しているほか、衛星写真を掲載し「研究所に関係した事故が発生源である可能性が最も高い」とする。同研究所はパンデミック前から、雲南省で採取したコウモリ由来のコロナウイルスのサンプルを多数保有していたとされ、2015年にはそれらウィルスの感染力を人工的に変化させた研究論文も発表している。一方で職員が適切な防護服を着ていなかったなど、安全管理体制に問題があったとの指摘もある。またWHO(世界保健機関)はCOVID19の最初の症例は研究所の近くで発見されたため、2021年に調査を行った。中国側が用意したデータを使った結果、ウイルスが中国の研究所から漏れた可能性は非常に低いとしているが、疑いは晴れない。尚、WHOが計画する2回目の調査を中国は拒否している。
以上の通り医療分野の研究には、生物兵器や人間改造に繋がるような研究もあり不安感は高まるが、最先端の研究が人類の健康に寄与することを祈るばかりである。
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