堅調な主要国株価動向
米政権による関税政策や中東リスク(例:イラン空爆)など地政学的リスクが高まる中でも、世界の主要株式市場は堅調な推移を見せている。本稿では、GDP世界1~4位の米国、中国、ドイツ、日本に焦点をあて、各国市場の背景と株価動向を整理する。
・米国…コロコロと変わるトランプ政策に翻弄されながらも、S&P500とナスダックは足元で最高値を更新。関税を筆頭に中東情勢や減税など、まだまだ予測不能な状態が続くが、米株はトランプ政権スター時に比べ不測の事態に対し鈍感になった。トランプ氏はTACOとも揶揄されるように、いざとなれば強硬な態度を軟化させると期待されるうえ、朝令暮改も多く逐一反応していられないということか。つまり中長期的な視点で米を見た場合、当面は利下げ局面が続く中、経済は緩やかに減速するもののドル安により製造業の衰退も緩慢でAI関連は成長を持続。関税策による貿易赤字縮小で、理屈的にはGDP成長率は再加速し税収も増加する。以上より、AI関連を中心に株価の上昇継続が予想される。ただし移民規制強化に伴う頭脳流出リスクは、圧倒的優位にある最先端分野において米国が徐々に競争力を落としかねず留意が必要だ。
・中国…足元では米中関係悪化による関税合戦の影響もあるが、実は中国株は過去10年間ほぼ横ばい。これは土地バブル崩壊、少子高齢化とデフレなど経済の日本化が根底にあり、日本の失われた30年を参考にした場合、株価低迷はあと20年程度継続する可能性がある。
・ドイツ…昨年は米大統領選のトランプ氏勝利で、ウクライナ情勢に加え、NATO問題や関税などへの懸念から欧州全体は悲観一色となった。加えて独では緊縮財政政策に対する意見の対立から連合政権が崩壊。解散総選挙となる政局不安も加わり、内憂外患の状態となった。にも拘らず独株は上昇基調を加速し市場には困惑が広がった。その後、2回目投票による薄氷の勝利で誕生したメルツ政権は財政支出拡大策を決定。戦後続いた緊縮財政を180度転換するとして、欧州経済全体の底上げ期待から欧州株全体が上昇し、独株も史上最高値を更新した。市場では独の財政政策転換はレジームチェンジとして好感されており、米からの逃避資金も流れ込む中で、独株は堅調な展開が続こう。
・日本…米国による追加関税リスクの高まりや円高進行により、輸出企業の業績懸念が台頭。また、物価上昇が継続する中、日銀は主要先進国で唯一の利上げ局面にある。さらに、都議選の敗北を受けた与党の支持率低下により、参院選での苦戦および政権交代リスクが意識され始めている。かような内憂外患の状態であるにも拘らず株価が堅調なところは、昨年の独に通ずる。独同様に政権交代で財政支出拡大を期待しているとも解釈できるが、米によるイラン空爆翌日の日経平均の底堅さ(結局59円安だった)を見ると需給はかなり良いと思われ、米関税や参院選で大波乱とならない限り、年末にかけて米独を追う形で最高値更新が視野に入る。
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