日本復活
昨年、日銀は2回の利上げを実施し政策金利を約30年ぶりに0.75%へと引上げた。一方で日経平均株価は史上最高値を更新するなど、金融市場では日本経済の構造転換を象徴する歴史的な出来事が相次いだ。長年ゼロ近辺にとどまっていた消費者物価指数も、足元では3年以上にわたり2%を上回って推移している。日本は30年に及ぶ長いトンネルを抜け、ようやく「普通の先進国」へと回帰しつつあるようだ。こうした経済の回復基調は本年も継続すると見込まれる。その主な理由を以下に整理する。
① 国際貿易環境の変化と日本の相対的地位向上
中国は台湾情勢やコロナ問題を巡る外交摩擦に対し、レアアースの輸出規制や軍事的圧力を通じて影響力を行使してきた。また、米国も対米貿易黒字国に対する相互関税導入など、対同盟国を含めて保護主義的姿勢を強める。GDPで世界1、2位を占める米中両国への信頼感が低下する中で、世界的にサプライチェーン再編が加速する。その過程において、政治的・軍事的を行使することが少なく、法制度や契約慣行の信頼性が高い日本は、貿易・投資のパートナーとして再評価されている。相対的に抑制された人件費や高い技術力も追い風となり、日本の製造業・関連産業が再び存在感を高める土壌が整う。
② AI革命と生産性向上
AIの急速な高度化は「ホワイトカラーの大量失業」を招くとの懸念を生んでいる。しかし、過去の産業革命と同様、AIは労働者を排除するのではなく、人間の能力を補完し、生産性向上と新たな職種や価値を生み出す契機となるだろう。深刻な人手不足に直面する日本では、AI導入によりこれまで人材不足がボトルネックだった企業の業績改善が期待される。米国のように大規模な人員削減に伴うコストが発生し難い点も、日本企業には有利である。また、完璧主義ゆえに意思決定が遅れがちだった企業文化も、細部業務をAIに委ねることで迅速化が進むだろう。さらに、AIの普及により、従来は組織のヒエラルキーに埋もれがちだった若手人材のアイデアも、低コストで事業化しやすくなる。結果として、スタートアップ創出が加速し、ユニコーン企業の増加も期待される。
③ 経営戦略の転換とアニマルスピリットの回復
過去30年間、日本企業は資金不足もあり新規事業での成功体験が乏しく、経営計画は前年踏襲が基本であった。しかし、コーポレートガバナンス改革やROE重視の潮流が浸透し、二桁成長を目指す経営が一般化しつつある。つまり、前年と同じ戦略では目標達成が困難となりがちで、企業のリスクテイク姿勢、すなわちケインズが唱えた「アニマルスピリット」が回復しつつある。
④ 理系学生の医学部離れ
近年、病院経営の赤字体質が定着しつつあり、医療業界の収益環境は構造的に厳しさを増している。個人病院の院長は依然として平均的に高所得だが、世襲でない場合には多額の初期投資や経営リスクを伴う点が障壁となる。これまで理系の優秀な人材の多くは医学部に進学し医師を目指してきたが、こうした環境変化を受け、今後は一般企業やスタートアップに進む理系人材が増える可能性が高い。結果として、研究開発力や技術革新力を備えた人材が再び民間企業に供給され、米新興企業のように日本からも第2のソニーやホンダが誕生する土壌が整うことが期待される。
総じて、日本経済は長期停滞からの脱却に向けた新たな局面を迎えている。
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