ブラジルレアル

ブラジル通貨レアルは、極右候補ボウソナロ氏の大統領就任への警戒感から2018年に下落したが、その後ボウソナロ政権が財政改革路線を引き継いだにも関わらず史上最安値近辺(*)で低迷している。

レアルの下落理由としては、年金改革法案に対する議会の抵抗、および米中貿易摩擦の激化による資源価格の下落が挙げられる。図1を見るとレアルが4レアル/$近辺まで下落したのは過去に3回(①アルゼンチンのデフォルトを発端とする債務返済危機、③ペトロブラス汚職事件を発端とするルラ元大統領罷免、④極右候補ボウソナロ氏の大統領就任)で、いづれもレアルと株価(ボベスパ指数)は同時に下落した。ところが現在はそのボウソナロ政権が前テメル大統領の財政再建路線を踏襲していることを好感しボベスパ指数が過去最高値を窺うのに対し、レアルは反対に過去最安値近辺の取引が続いており、過去の経験則から乖離している。つまり現状は資源価格下落への懸念が強いようだ。そこで図1のCRB商品指数を見てみると2000年来の安値圏へと下落しており、現在のレアルは資源通貨としてCRB商品指数に連動して売られていると見ることができ、最近低迷する豪ドルにも同様の現象がみられる。

 さて、議会の抵抗により骨抜きとなることが危惧されていた年金改革案だが、財政健全化の目途は当初の10年で1.2兆レアルから譲歩によって約1兆レアルへと小幅の減少に留まりそうだ。法案成立には上下両院各2回の採決で2/3以上の賛成票を必要とするためハードルは低くないが、下院で大きな影響力を持つマイア議長が協力する姿勢を明らかにしたことで、まず6月中の下院本会議採決で可決される可能性が高まりつつあり、財政再建に関する問題点は確実に解決に向かっている。残りの問題である資源価格に関しても、G20の合間に米中首脳会談が持たれることから緊張緩和の可能性が出てきており、少なくとも商品価格の下落基調が止まれば財政再建への期待感からレアルには買戻し圧力がかかろう。


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