仮想通貨リブラ
今年6月にFacebookが仮想通貨リブラを発表した。Facebookが主導するが運営はスイスに設置された独立非営利メンバー組織「リブラ協会」により行われる。VISAやマスターカード、eBay、Monexなどが賛同しリブラ協会に加盟する一方、各国中銀は総じて警戒感を示しており、PayPalに続きVISA、マスターカードも結局協会離脱を発表した。ここで、リブラの仕組みと先行きを考えてみよう。
目的
リブラの目的は世界中の銀行口座を持たない人に必要な金融サービスを提供すること。世界では17億人が銀行口座を持っておらず、送金や支払いなどの金融サービスコストは彼らにとり負担だ。一方で、17億人中10億人がスマートフォンを使い、5億人がインターネットに接続できる環境にあり、リブラはこの層へのペイメントサービス提供を目指しており、銀行サービスと競合するものではないとしている。
仕組み
・BitCoinは裏付け資産が無く価格変動が激しいが、リブラは米ドル・ポンド・ユーロ・円の通貨バスケットを裏付け資産として保有し価格変動を抑制できるとして、ステーブルコインと呼ばれる。
・仮想通貨のように売買されるリブラコインと、運用の配当が受取れる協会加盟者向けのLITと呼ばれる2種類のトークン(代用貨幣)がある。多くの人が通常使うのはリブラコインで、カリブラというFacebook子会社のデジタル通貨ウォレット(電子財布)で管理され金利はつかない。
・BitCoin同様ブロックチェーン技術(ネットワークを利用した分散型台帳技術)を使っているが、独自システムにより毎秒1,000件の処理が可能。ちなみにBitCoinは毎秒7件で、VISAは毎秒2.4万件の処理能力と言われ、リブラはその中間の処理速度となる。
日本の対応
現状の争点はリブラが仮想通貨なのかそれ以外(通貨建て資産)かの判断。仮想通貨であればBitCoinなどと同様仮想通貨交換業者がリブラを扱える。一方で通貨建て資産と見なされ、さらに為替取引に該当する場合には、100万円を超える取引を銀行業、それ以下は資金移動業とされるため、仮想通貨より規制が厳しくなり発行体であるリブラ協会によるライセンス取得も必要となる。
概念図→
問題点
・ある国でリブラ流通量が急増すると、その国の中央銀行による金利操作や流動性供給などの金融政策機能が低下する。例えばベネズエラなど法定通貨が不安定な国では、リブラが認可された場合、自国通貨からリブラへの交換が殺到し金融政策が効かなくなる恐れがあるため導入が禁止される可能性が高い。
一方、銀行口座を持たない貧困層の多数が法定通貨が不安定な国に居住しているため、リブラ設立により銀行口座を持たない人への金融サービス提供の目的とは矛盾した現象が予想される。
・取引が拡大した場合、リブラ全額に対し裏付け資産となる通貨バスケットを持つことは通貨保有先金融機関に課される準備預金の問題(金額や金利)もあり難しい。つまりリブラ全額に裏付け資産が存在するわけではないので資産保全上の課題が残るうえ、市中金利がゼロから離れるにつれ問題が発生する(バスケットのマイナス金利負担をどうするか、プラス金利となれば顧客が離散するなど)。
以上より、当面は送金手段などに使途は限られそうだ。
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