消費者物価指数(CPI)と高齢化社会
日銀の2大目標である「完全雇用」と「物価の安定」のうち前者はほぼ解決済み。残る目標として低迷する消費者物価(CPI)を持上げるため、マイナス金利採用や量的緩和を行っているが、目標の2%は相変わらず遠い。ここで日本で先行する高齢化が物価低迷の原因とも言われるが検証してみる。
まず家計の物価上昇への貢献を見てみる。国民が消費を増加させればCPIは上昇するが、商品・サービスの魅力を向上しても、購入にはお金がかかるので、国民が①所得②貯蓄取崩し③借金するの何れかで資金手当てすることが必要。ところが、以下の理由で家計から見てCPIを持上げる力は乏しい。
①消費に回すことができる可処分所得は、近年GDP(=家計、政府、企業利潤の総和)成長率が低いこと、および社会保険料上昇の影響で低下している。
②家計貯蓄率は過去から低下し既に2.3%とほぼ枯渇しているため、特に消費性向の高い子育て世帯には消費に回す貯蓄はない。
③世帯の貯蓄状況を見ると50歳未満は既に負債超過で、将来的な所得増が見込めない限り借金での消費拡大はない。
続いて政府から見て本来新たな消費に回るはずのGDP成長分や赤字国債による財政支出が貢献できているか見てみる。日本企業の労働分配率は約50%と他先進国と比較すると低く、GDP成長分は企業内に留まる。一方、政府支出100兆円のうち30兆円が社会福祉関連で、そのうち21兆円は高齢者分。税収等で戻ってくるのは70兆円で残り30兆円は翌年の借金。つまり前年比増加分としてGDP成長と国の借金が、企業と医療介護関係など高齢者に流れ込む仕組みのため、結果として国民の金融資産1,800兆円の6割以上が60歳以上に集中している。このお金を直接消費に回してもらうか、子育て勤労世帯等に再配分してもらわないと消費が増えずCPIは上昇しないうえ、今後高齢化が進むと状況はさらに悪化しそうだ。ここで前提をGDP成長率=CPI上昇率=長期金利、つまり実質成長率0%とし、このまま変化が起きないと30年後の日本がどうなるかを試算してみる。
<CPIは30年以内に上昇する>
現在80歳以上人口が1,000万人に対し高齢による死亡者数は年間約100万人。一方現在70歳代人口は1,500万人、60歳代が1,600万人で、今後死亡者数は増え続ける。2050年にはそれら高齢者から次世代への相続がほぼ終了していると思われ、相続税30%を適用した税引き後の相続分1,800×0.6×0.7=756兆円は、貯蓄が少なく限界消費性向の高い次世代の可処分所得に合算される。限界消費性向を仮に0.6とすると乗数効果として累積消費額1,890兆円。30年間かけて直線的に増加すると仮定し30年後の消費増加(三角形面積)分は1,890÷30年×2=126兆円と計算され、現在の年間消費額約300兆円が30年後には300+126=426兆円と1.42倍まで増加するので、CPIは30年以内に上昇しそうだ(現実的には同時にGDPや金利も上昇し当初の前提は崩れる)。
<税収も増加する>
高齢化の進展とともに社会保険関連費用は増加するが、それ以上に相続税と上記消費税分が増収となるので、国債発行残の増加もある程度抑制される。
つまり高齢化が進むと日本経済は破綻すると言われるが、相続税制度を整備しておけば国の借金、社会福祉の何れも破綻は免れCPIは上昇すると計算される。そして、今後相続関連ビジネスは小売りや金融を含めた成長分野となりそうだ。
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