産業構造変化がTOPIXに及ぼす影響

 米株の好調さに比べると日株は最近上値が重い。これは過去3回跳ね返されている日経平均24,000円ラインで売りが止まらないことも一因だが、TOPIXはさらに低迷している。

日経平均の24,000円が特殊な壁だとするとTOPIXは抵抗なく上昇しているはずだが、図1を見ると最近劣後している。これはTOPIXの自動車や銀行株等の比率が高く、それら業種が足を引っ張っている事が原因と思われる。これらはバリュー株の代表業種なので、東証バリュー株インデックスはTOPIXよりさらに劣後している。それではこれら2業種がバリュー株化した理由について考えてみる。

自動車株の低迷は世界的な現象で図2のように堅調な米株市場でも同様の現象が観察される。つまり、ガソリン車から電気自動車への交代による産業構造変化が原因と考えられ、電気自動車企業の代表TESLA株は反対に上昇が止まらない。

一方、銀行株はというと米国では比較的堅調で、不調なのは日欧である。これはFRBが政策金利をプラスで維持する一方、日銀とECBのマイナス金利政策により、日欧銀が貸出など運用利回りの低下に加え、預金量に応じたマイナス金利を政府に払い続けているためと思われる。ここで何故日欧の中銀がマイナス金利という奇策を採用したかというと、日米欧で失業率は歴史的低水準となる一方でインフレ率は中銀の目標値を下回るから。日米欧でインフレ目標を共通の2%としているが、そもそもGDP成長率が異なる地域国で同じインフレ目標を設定していることに無理がある。たとえば日本のGDPは直近20年間ほぼ横ばいで、TOPIXもそれを反映しほぼ横ばい。一方、米国のGDPは20年で2.2倍、S&P500は同様に2.4倍である。この2ヵ国が同じインフレ目標で金融政策を行うと、経済成長のない日本には金利引き上げ局面がなかなか訪れず、景気低迷期の利下げにより金利が低下する一方となる。このような状態を反映し日本の銀行株は下落が止まらない。

以上より、これらバリュー株は当分の間低迷すると予想され、TOPIXの低迷は自動車や銀行株のウェイト問題でもある。つまりそれらウェイトが低い順で、日経平均あるいはグロース>TOPIX>バリュー>自動車>銀行、という株価リターンが当面続くと予想され、最近は膠着したTOPIX構成銘柄の入替えも検討されている。構成銘柄の入替えがない場合にTOPIXが反発するタイミングは、日本の自動車産業が再びトップランナーとなるようなイノベーションの起こった時、あるいは日銀がインフレ目標を変更した時か。       

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