日本の財政を20年もたせる

 2019年10-12月期の実質GDP成長率が年率▲6.3%(名目▲4.9%)と低迷、7-9月期も0.5%へ下方修正されたことで、名目成長3%を基に2025年にも基礎的財政収支黒字化で財政は破綻しないとする政府の計画は本当に大丈夫なのかとの疑念が湧く。そこで現実的な日本の財政破綻回避予想図を描いてみよう。

まず過去20年間をみると日本の名目成長率は年率0.4%、バブル期を含む30年間でも年率0.9%なので、今回のGDP低迷を見るまでもなく3%成長には無理がある。それは内閣府も認識しており、政府の財政計画に使用される「中長期の経済財政に関する試算」では、3%成長実現ケースに加えベースラインケースとして成長率1%前半で2029年までの試算も併記している。1%前半でも実績対比ではやや背伸びをしているにも拘らず2029年はまだ財政収支赤字だが、2040年に黒字化するためには表1に示すように、2029年以降に緊縮財政を行い歳出を現状対比ほぼ横這いとすれば可能と試算される。

まず人口は、2040年に1億人以下となり、生産年齢人口はその半分。途中2030年には団塊の世代が平均寿命域に到達し85歳の人口は1.8倍に膨らむが、その後は減少する。

可能な歳出を求めるためにまず歳入面を見てみる。人口は減るものの2029年以降もGDP成長に伴い税収等は増加するうえ、現在個人資産の7割近くを所有する高齢者の死亡により相続税増加が見込まれ(高齢者が1.8倍なので相続税も1.8倍で実効相続税率を15%とした)、2040年には84兆円となる。つまり歳出も84兆円に抑えることができれば財政収支がバランスする。

歳出で大きなウェイトを占める社会保障関連は、高齢者の減少に応じて2029年以降に年金支払いなどが減少し2040年に38兆円となる。ベースラインケースでは歳出が2029年まで増加し借金も増加しているが、その後の社会保障関連費の低下をそのまま基礎的財政支出に適用し、それ以外は人口減少にも拘わらず横這いに止めることができれば83兆円となり遂に財政収支が黒字化する。

ちなみに国債発行残は1300兆円まで増加するが2040年以降に減少し、年間死亡者数から計算した個人金融資産1400兆円以下を辛うじて保ち、国内でのファンディングが可能な状態が続く。

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