日本株の下値目途

 新型肺炎の感染拡大に歯止めがかからないことが世界的な経済活動の停滞に繋がるとして、世界中の株価が急落しており、NYダウは12日に10%安($2352.6)と1987年のブラックマンデー(22.6%安)に次ぐ下落率を記録した。市場はパニック状態で割高割安に関係なく売りたい人が売り終わるまで株価は下げ続けるとの見方もあるが、ここで株価指標を用いて日本株の下値目途を考えてみる。

<株価指標:株価純資産倍率(PBR)>

株価指標の代表的なものとして株価収益率(PER)や自己資本利益率(ROE) などがあるが、収益に基づく指標は今後低迷が予想される場合は参考にならない。一方、資産価格は企業収益と比較し変動が小さいためPBRは下値目途として用い易く、過去にも1倍で跳ね返ったことが何度かある。

図1を見ると、TOPIXのPBRは0.87倍で過去最低(0.81)に近づいており底値が近そうだ。ちなみに20年間でPBRが1倍を割れたのは①リーマンショック2008年 (0.81)②東日本大震災2011年 (0.87)③チャイナショック2016年(0.99)④米中貿易摩擦2018年(0.99)の4回。

①、②では1倍割れ期間が1年以上続いたが、これは、

①:リーマンショックにより企業倒産が続き世界的な景気後退局面が長引き、有価証券を主とした長期間にわたる資産価格下落が予想された、②:東日本大震災に伴う福島原発事故で関東圏が放射能汚染され、土地を主とした資産価格の長期下落が予想された、等の理由だった。

一方、③:チャイナショックでは中国景気の減速は懸念されたものの、それによる日本の資産価格への影響は軽微と思われた、④:米中貿易摩擦では米中の貿易量低下を周辺国が補うような動きも見られ、日本の資産価格下落は回避されそうだった、等の理由により一時的にPBRが1倍を割れたもののその後の日本株は反発した。

今回はまだ連鎖的な企業倒産や地価下落は発生していないが、感染拡大に歯止めがかからなければ、観光産業などを中心に倒産する会社が今後増加するリスクもあり、下値目途は過去最低のPBR=0.81倍を適用した場合、TOPIXで1,150ポイント、日経平均では16,000円となる。

                                  

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