根拠なき熱狂再び
今週のトピック---根拠なき熱狂再び?
新型コロナ禍により足元の企業業績が悪化する中、米国株式は急速に買い戻されたため、現在の株価は株価収益率(PER)などの指標で見た場合、割高に見える。米国株式がファンダメンタルズに比して説明ができないほど上昇を続ける状況は過去にも何度か、最近では2016年の米大統領選後に見られたが、特に1995年以降の米株ラリーは当時のグリーンスパンFRB議長をして「根拠なき熱狂」と揶揄されたことで記憶に刻まれている。
図1はNYダウ、ナスダック指数およびNYダウPERの推移を1995年以降の米国株のラリーからハイテクバブル崩壊まで示したもので、株価は1995年を1として計算している。これを見るとそれまで10倍以下で推移していたPERが1995年以降のNYダウの値上がりとともに上昇し、1999年には25倍を越えている。当時のグリーンスパンFRB議長は企業収益上昇を伴わない株価の上昇に対し1996年末に警鐘を鳴らしたが、その後3年にわたり株式マーケットは上昇を続け、1995年当時4,000ドルだったNYダウは2000年には11,500ドルまで上昇し約3倍となった。図を見ると1999年にはNYダウのPERが25倍まで上昇しているが、その後NYダウがほぼ横ばいでも企業収益の上昇を受けPERは低下している。米経済の成長率は1990年代後半にインターネットやパソコンなどの技術革新(IT革命)によりギアチェンジし、将来の収益を見越してPERも高位安定し企業の収益が追いつくという状況になったようだ。ちなみに図1のナスダックの動きを見ると株価の上昇はNYダウを凌駕しており、1995年から2000年にかけて約6倍まで駆け上がった。当時は米国経済の生産性が構造的に上昇したという「ニューエコノミー論」も展開される中、マイクロソフトやインテルなどに代表される米ハイテク企業がIT革命により世界標準の地位を確立し、市場を寡占することで驚異的な成長を遂げた。現在もNYダウのPERは株高と企業業績悪化により22倍まで上昇し、ナスダックは史上最高値を更新するなど1995年当時と似通った動きにも見える。仮に今回の株価上昇がIT革命に匹敵する新展開を先取りしているとするならば、その背景にある新技術は今回は何で、世界標準となるような新技術を確立する会社はどこなのだろうか。
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