アジア勢躍進
中国の1-6月貿易統計で東南アジア諸国連合(ASEAN)との貿易額が貿易全体に占めるシェアで14.7%(前年比+0.7%)となり、国・地域別で初の首位となった。昨年首位のEUは英の離脱もあり14%(同-1.4%)と2位に、3位は米国で外交関係の緊張が響き11.5%(同-0.3%)だった。米国が対中国の半導体取引の制限を強めているため、中国を含む多くの企業が生産拠点をASEANなどに移転していることも貿易額を押し上げており、中国のASEANからの半導体輸入が前年同期比24%増、ASEAN向けの輸出は同29%も増えた。
ASEANの加盟国は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー及びカンボジアの10カ国。その中でも中国からの生産移転先としては、賃金が比較的安く教育レベルが高いなどの条件を満たすマレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムなどが候補となる。加えてASEAN以外にも地理的に近い台湾や韓国も移転先候補に挙げられ、それら各国の株価はコロナショック後に買い戻されつつある。
図1は直近1年のそれらASEAN諸国および中国、台湾、韓国の各国株価指数(2019年7月=100)の動き。中国株は足元で政府系メディアによる株高推奨報道を受け足元で急騰したが、台湾、韓国、マレーシア、ベトナムなどの株価も堅調だ。これはコロナショック以前からすでに米中貿易摩擦の影響で、ASEAN諸国などが中国から部品を輸入して組み立てるなど、いわゆる生産国として受け皿となっていたことに加え、コロナショックによるサプライチェーン断絶などの影響を受け、生産拠点を中国から周辺国に移転する動きがさらに加速したものと思われる。
表2は各国の産業別GDP構成比だが、これらの国においてはすでに構成比率が、第3次>第2次>第1次産業となっており、新興国から先進国へと変貌しつつあることがわかる。
一方でASEAN内でもシンガポールやインドネシア、フィリピンの株価は低迷している。シンガポールは国民1人当たりGDPが日本の約1.6倍で賃金が高いうえ国土も狭いので、日本以上に中国の代替生産拠点としての恩恵はない。また、インドネシアやフィリピンは、教育レベルに加え、島が多く工場立地に必ずしも適していないといった問題点が指摘される。
世界的にウィズコロナを見越したハイテク関連企業の成長が今後見込まれる中で、米中貿易摩擦が長引けば、ASEANおよびその周辺国はますます注目を集めよう。
0コメント