円・米ドル
足元で米ドル・円は104円台と約4カ月ぶりの円高となり、背景には米中関係の悪化があると言われる。米国政府はテキサス州の中国総領事館について、知的財産を窃取する一大拠点であるとし閉鎖を要求。これに対抗する形で中国外務省は四川省の米総領事館を閉鎖を通知するなど、両国が対立姿勢を強めたことで市場に警戒感が広がり、円、スイスフランや金などの避難資産が買われた。一方、ファンダメンタル的にも①米は新型コロナ感染者数の増加が世界1位を独走状態にあるなど経済完全再開の目途がつかない、②世界中で金利が消失する中で相対的に高かった米金利もゼロ金利間近となり買われづらくなった、③新型コロナ対策として3兆ドルもの米ドルが市場に供給され米ドル需給が崩れたなど、米ドルが売られやすい条件が整っていたともいえ、米中関係悪化はきっかけに過ぎず、仮に米中関係改善の動きが出ても、直ちにドル円が元に戻るというわけでもなさそうだ。
ここで①は今後のワクチン開発の進捗次第であり、その予想は専門家に任せるとして、②の米金利は過去を見ると日米金利差とドル円の相関は高い。図1は過去20年間のドル円と日米2年国債の金利差推移だが、ほぼリンクして動いていることが分かる。それが2018年頃からの金利差縮小にも拘らずドル円が横這いとなり、ここもと円高マグマが溜まっていたようにも見える。
次に③の米ドル需給だが、やはり市場に通貨が大量に供給されるとその通貨の需給が緩み価値は下落しやすい。図2は過去20年間のドル円とFed・日銀の保有資産残高の対GDP比推移。リーマンショック後は経済対策によりFedの保有資産残高が拡大したため、米ドルの需給が緩みドル円は110円(2008年)から76円(2012年)まで円高が進行した。その後、日銀はアベノミクスの一環として異次元緩和を行い、その結果、円の需給が緩み一転円安トレンドへと転換している。今回は、新型コロナ対策として米国は3兆ドル、日本は2.2兆ドル(事業規模)の財政政策を打ち出しており、米ドル、円ともに需給は緩むものの、日本政府の実質的な投資額(真水部分)は0.5兆ドルなので相対的に米ドル安要因となる。
将来、①のワクチン開発が成功となればコロナショックは終息に向かい市場全体が新たな局面入りとなるが、現状は②金利面、③市場需給面からも円高となり易い状況にあるうえ、チャート的に見ても三角持合いをやや下放れているため、目先は100円程度まで円高が進行する可能性もあろう。
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