電気自動車
日本の主力産業である自動車産業の未来が大きく変わろうとしている。ここではそのキーワードである電気自動車(EV)について考えてみる。
ある日の夕暮れ、ショッピングが終わり買い物バックを抱えて駐車場に到着。リモートキーで車を呼ぶと駐車場から無人でスルスルと車が出てきて目の前に停車。運転席に座ると、スマホに連動したカーナビが事前に設定された場所を目的地に自動設定、ほぼ自動運転で目的地に到着し、難しい縦列駐車を自動でこなす。まるで未来の話のようだが、すでに一部のEVで実現されている機能である。エコであるうえに便利さも手伝いEVの市場シェアは現在新車販売の3%程度まで上昇中で、今後欧州や中国などでのガソリン車販売禁止の影響で2038年には世界の新車販売の50%がEVになるとの予想もある。
EVは、部品数が従来型エンジン式自動車の約3万点に比べ、約2万点と少なく他業種からの参入障壁が低い一方、誰が作っても似たような性能の車ができるため、デザインとソフトウエアが人気を左右する点などスマートフォンに似たところがある。思い起こせばスマートフォンは、フィンランドや日本の電機メーカーが未来の携帯電話として発表した試作品からインスピレーションを得たといわれており、当時の経営陣が「ボタンを押せない電話機なんて売れるはずがない」として商品化を見送ったものを、米アップルが商品化し大ヒットした経緯がある。EVも以前は日本勢が商品化の先頭ランナーだったが、現在は米中勢が市場を席巻しており、スマートフォンのケースをほうふつとさせる。政府による規制に加え、デザインやソフトウェアの巧拙で外国企業の後塵を拝するのは日本のいつものパターンだが、最近は得意の部品供給面でも後れを取っているようだ。例えば、EV向けに大量の電池を供給する日本のメーカーは、提携する米EVメーカーの生産拡大スピードについて行けず、販売量の増加にもかかわらずコスト増から電池部門は赤字を脱せずにいる。
さて、非常時に家庭用蓄電池にもなるなど、便利そうなEVだが以下のような問題点を抱えている。
<問題点1> 充電ステーションが少ない
充電時間が長い一方で高速充電ステーションがまだ少ないため、遠出をするときは注意が必要。
<問題点2> 充電時間が長い
ガソリン車の場合、給油は5分程度で済むが、EVは高速充電でも2時間近くかかる。
<問題点3> 電池が減るのが早く航続距離が短い
乗り方次第で早く電池が減ってしまう傾向があり、航続距離が400kmとガソリン車の約700kmに比べ見劣りする。
<問題点4> 自動運転の完成度
自動運転中の事故がいくつか報告されており、完成度の引上げによる信頼性の獲得が必要。
<問題点5> 電気不足
世界中の自動車の半数がEVとなった場合、電気不足から電気料金が上昇、燃費悪化の可能性がある。
日本の自動車産業の先行きガラパゴス化が懸念される中、最近、日本の電機メーカーがEVの試作品を発表した。1980年代まで日本の企業はブレイクスルーを得意技としてきたが、そろそろ発想と技術力での巻き返しを期待したい。
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