株価と金利

古典的には株価と債券は逆相関にあり、景気が良いと株価は上昇するが、景気が良いと企業と消費者の購買意欲が高まるため物価上昇が起こり金利も上昇(債券価格は下落)すると考えられてきた。物価がそれほど上昇しない場合にも、景気の過熱を未然に防ぐため中央銀行が予防的利上げを行うとやはり金利は上昇し易い。ところが近年は株高にもかかわらず金利も低下(債券価格は上昇)する傾向が世界中で見られ、毎年のように株価(S&P500)が上昇している米国でも金利は長期にわたり低下傾向を辿ってきた(図1、図2参照)。ここでその原因を考えてみよう。

まず株価が上昇する要因は、企業業績が好調、あるいは好調が予想されること以外に、金利の低下も挙げられる。企業業績は分かり易いとして、金利低下による株価上昇を解説すると以下のようになる。

①企業の借入コストの低下

企業の債務に対する金利支払いが減少するので、見込まれる収益向上に応じて株価は上昇する。

②配当の選好性

仮にS&P500の配当が年2%とした場合、10年国債利回りが2%であれば株式よりクレジットの高い国債を購入する投資家も多い。しかし10年国債利回りが0.5%まで低下した場合、10年間の投資で差引=15%分の超過収入が期待できる株式の魅力が上昇するため、株式価格は15%程度上昇しても許容できる。

③益利回りの選好性

株価の割高割安を表す指標である「益利回り」=1株当たり利益÷株価で、金利と比較される(益利回り-長期金利=イールドスプレッド)指標だ。ここで1株当たり利益とイールドスプレッドが変化しないとすれば、長期金利低下により上記式に従うと株価が上昇する。

つまり現在は金利低下が株価上昇要因となっている面もあり、株高と債券高が両立しているようだ。

ここで図2は日米欧株価の20年間推移だが、米株の強さが際立っている。リーマンショックまでは日米欧株は凡そ揃って動いていたが、2014年に欧州、2016年に日本がマイナス金利局面入りとなったころから米株に対する株価の遅れが目立ってきた。企業収益悪化による利下げという面もあろうが、金利低下による株価上昇が起こらない。これは、ゼロ金利で借入→限界まで販売価格を下げて会社存続→業界全体が値下げに巻込まれ利益低下→株価と物価低迷、というサイクルに入っているとも考えられる。昨今米金利も低下して米国の日本化と言われるが、足元では長期金利が0.3%台を底に反発基調に転じており米国の日本化は避けられそうな状況だが、大統領選後はどうなるだろうか。

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