バイデン政権始動
ペンシルバニア州などがバイデン氏勝利を公式認定したことを受けて、トランプ大統領も政権引き継ぎを容認、ようやくバイデン氏への政権移行が本格化する。今後人事などを通して、政権が目指す米国がはっきり見えてくると思われるが、現状までに公表された事項から各市場の動きを予想してみる。
<株式>・・・バイデン氏は今後10年間で10兆ドルの財政支出を公約として掲げる一方で、議会とは「ねじれ状態」となりそうで増税など不人気政策の成立は難しそうだ。加えて、財務長官にはイエレン前FRB議長を起用する方針、イエレン氏は雇用に関する研究が専門で政策決定において失業率に注目する。足元の失業率の下げ渋りに関して最近の討論会では「金融政策に利下げ余地はなく、財政政策が重要」と述べている。この想定通りとなれば、金融緩和継続の下、増税なしの財政支出拡大という株式市場にとって絶好の条件が整うことになる。加えて政権交代後の100日間はハネムーン期間と呼ばれ、新政権への期待から株式は堅調に推移することが多い。図1は過去30年の民主・共和政権交代後6ヶ月間の株価(NYダウ)推移だが、交代後6ヶ月で上昇しなかったのは2008年のオバマ政権誕生時だけだった。現状の株価上昇ペースはやや急過ぎる感もあるが、今後期待できる銘柄としては、バイデン氏が気候変動問題担当に実力派ケリー氏を充てるなどの動きからクリーンエネルギー関連が挙げられる。
<債券>・・・バイデン氏はトランプ氏のようにFRBに対し利下げ圧力をかけることはないと思われるが、FRBはイエレン新財務長官の意向に沿う形で完全雇用に近い状態となるまでゼロ金利政策を続けると予想され、短期金利は低位安定が見込まれる。一方で、バイデン氏は財政支出拡大に前向きだが増税のハードルは高く、当面は国債増発懸念が高まろう。結果としてイールドカーブにはスティープニング(短期より長期の金利が上昇)圧力がかかり易い。
<為替>・・・世界的な株高によるリスクテイク=避難通貨売りの動きに加え、米国の財政支出拡大、金入緩和に伴う資金供給により市場に米ドルが溢れるため、リーマンショック後の景気回復局面と同様にドル安が予想される。通常は財政赤字拡大に伴うインフレ懸念から金利が上昇し、それがドル買い需要を生むことなるが、ゼロ金利政策の継続が見込まれるため金利上昇は限定的となり、結果として緩やかなドル安が続こう。
<海外>・・・外交面でキーとなる国務長官にはブリンケン元国務副長官が起用される見通しで、市場が警戒していたオバマ政権で親中政策を進めたライス氏の名前は挙がっておらず、新政権は公約通り友好国と共同で穏健な対中政策を進めると予想される。その場合、中国との関係が深い欧州、および中国近隣の親米国として日本、韓国にはポジティブな影響が期待できよう。
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