米金利上昇
米上院決選投票で民主党の2候補が当確となり、米国で所謂“トリプルブルー”が現実となった。大型経済対策に伴う財政支出拡大、国債増発懸念から債券は下落、10年金利は一時的に1.2%近辺まで上昇した。先行きの景気回復期待からBEI(先行きのインフレ率を示すインデックス)が2%超えとなったことも金利上昇を助長したと思われるが、ここで米長期金利がどの程度まで上昇する可能性があるかを予想してみよう。
ここで10年物BEI=2%とは、今後10年間のインフレ率(年率)の平均値を市場が2%と予想していることを意味する。(図1はイメージ図)。一般的な物価と金利の関係式として有名なフィッシャーの方程式は、名目金利=実質金利‐期待インフレ率であり、現実に当てはめてみると10年金利(名目金利)1%と10年BEI(期待インフレ率)2%となり、10年実質金利は▲1%と算出される。つまり現状は実質金利がマイナス圏にあり、借入による設備投資等を促す所謂“高圧経済状態”ということになる。この経済環境は、借金をして金などのインフレに伴って価格が上昇する資産を購入するだけで利益が出る状態とも言え、足元における金やビットコインなどの価格上昇も説明できる。
図2は過去20年間の①10年国債金利と②10年BEIの推移で、①-②(実質金利)がマイナスとなる局面は珍しく、現在は過去最大のマイナスとなっており資産価格全般の上昇が見られる。さてこの高圧経済状態が今後どうなるかだが、過去を振り返ると2013年はFedの資産買入額削減(テーパリング)、2018年はマーケットの自力調整による長期金利の上昇により通常の経済状態へと戻った。今回考えられるシナリオとしては、Fedは2023年まで利上げしないことを示唆しているものの、BEIが一段上昇して実質金利の低下に伴い資産価格がさらに上昇すれば、金利上昇をある程度容認する可能性があり、その場合の10年金利は実質金利がゼロとなるレベル、BEI=2%であれば2%が当面の目処となる。但し、2018年同様に金利の上昇過程で株などの資産価格が大きく下落する場合は、金利が2%に届かないケースもあろう。一方で長期金利の上昇前に資産価格の下落を迎えた場合は、追加の金融政策としてゼロ金利からマイナス金利政策へ、あるいはETF等のリスク資産購入など、Fedの日銀化が起こる可能性がある。この場合は長期金利の再度の低下が見込まれる。
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