バリューかグロースか

昨年以降、新型コロナの感染拡大やワクチン開発、実用化などの材料が出る都度、グロース株優勢とかバリュー株の逆襲などの分析コメントが市場で聞かれるが、その実態を探ってみた。

まず「グロース株」とは、企業の売り上げや利益の成長率が高くその優れた成長性ゆえに株価の上昇が期待できる株式のことを指し、米国であればGAFAなど革新的な商品やサービスを通じて市場シェアを拡大し増収増益を続けているような企業が多く、一般に投資家の人気が高いという特徴がある。

一方「バリュー株」とは、売り上げや利益の成長がさほど期待できないなどの理由から、現時点の株価が本来的な企業価値を考慮した水準に比べて安いと考えられる株式のことで、コロナ禍で収益が悪化した航空関連や日本であれば商社や金融株となり、投資家の人気は低く放置されているケースも多い。

さて、コロナ禍はリモートワークや巣ごもりなど人々の生活スタイルを変え、先進的なビジネスを武器とするグロース株に有利として、感染再拡大などの悪いニュースに対してもグロース株は上昇する。また、コロナ禍で世界的に金利が低下したことも一般的に借り入れが多い傾向がある新興株を含むグロース株には有利とされる。一方で、ワクチン実用化などでコロナ以前の正常な経済状況が視野に入ると、今度はコロナ禍で悪化していたバリュー株を中心とした企業の収益が回復するとして、バリューの逆襲とされる。

図1は世界の1日当たりコロナ感染者数と日米欧のバリュー・グロース株価比率の推移を示したもの。ここで①日本は(グロースが多い日経平均÷バリューが多いTOPIX)、②米国は(ナスダック÷NYダウ)、③欧州は(ユーロストックスハイテクインデックス÷ユーロストックス50)、1年前を1として表示した。図を見ると感染者数拡大で各国が行動制限を実施した昨年夏は日米欧でグロース株優位となったが、昨年10月以降の再拡大時はワクチン開発のニュースや米大統領選の無難な決着などの影響でバリュー株が一時的に巻き返した。足元では感染者数は減少傾向にあるが、新たに変異種拡大のリスクを織り込む動きからか再びグロース株が優勢だ。全体的にはコロナ収束→バリュー優位、再拡大→グロース優位という構図に変化はないようで、トレンドとしてはグロース株優位の状況が続いている。

バリュー株とグロース株の格差拡大は、社会構造の変化による新旧企業の交代を株価が示している可能性もある。2000年にはインターネット普及への期待からグロース株バブルが発生。その後バブルははじけたものの、マイクロソフトやアマゾン、アップルといった企業は成長を続け、世界市場を席巻するほどの巨大企業となった。グロース株は将来の利益成長を織込むためPERが割高となる傾向があるが、コロナ禍により社会変化のスピードが加速されることで将来の利益成長を短期間で実現できることから買われていると見ることもできる。2010年以降継続しているグロース株優勢の状況はまだ続きそうだ。

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