テーパリングって何?
先週のFOMCでは政策金利は現状維持となったものの、メンバーによる先行きの金利予想は引上げられ、加えてパウエル議長のテーパリング議論開始の発言もあり、米金利は一斉に上昇、株価は下落した。ここでテーパ―リングが市場でなぜ注目されるか一度確認してみよう。
そもそもテーパリングとは、量的緩和策である金融資産買入れの金額を順次減らしていくことを指す。昨年は政策金利引下げの余地がほぼ無い状況下でコロナショックに見舞われ景気が急激に悪化、FRBは国債や住宅ローン担保証券(MBS)などの金融資産を直接買い入れることで市中への資金供給を増やし、景気を刺激する量的緩和策を採った。その結果、足元では景気回復の副産物として資産価格の上昇が警戒されている。図1に量的緩和策が景気を刺激するとともに資産価格を上げる仕組みを示した。
FRBは量的緩和策として準備預金を使い国債・MBSを購入①する。その資金を利用して国は公共事業を、企業は事業活動を活発化②する。結果として企業収益が拡大、景気が回復③、お金は民間金融機関の預金④を経由し、最終的にFRBに戻る⑤。この資金は再び国債、MBSの購入に回ることを凝り返し、景気刺激の好循環が継続することになる。
ところが低金利下では、一部のお金は配当金や値上り益などの見込める株や土地など資産に流れ込み、資産価格が上昇することになる⑥。具体的な数字を見ると、昨年6月から月間1,200億ドルの国債とMBSを購入した結果、FRBのバランスシートは1年間で約3.6兆ドル膨らみ約8兆ドルとなった。増加した資産の97%は国債やMBSで、増加した負債の60%は準備預金だった。GDPはパンデミック前をほぼ回復する一方、米国株は昨年の底値から1.8倍、金は1.3倍、ビットコインは約10倍となった。
足元の米国では、景気回復に伴う物価と資産価格の上昇が行き過ぎだとして、FRBは利上げの前に量的緩和からの出口戦略、テーパリングの議論を始めることになる。つまりテーパリングとはこの膨らんだバランスシートを縮小させることで、手段としては、まず購入を段階的に減らす、続いて償還分の買換えを停止する、さらには保有債券を売却するがある。最終的なバランスシートの目標規模は2019年度時点のFRB資産額である約4兆ドルが考えられるが、縮小スピードは2013年のバーナンキショックの教訓を踏まえ、2017年のイエレン前議長の発言通り、「ペンキが乾くようにゆっくりと」進める可能性が高い。尚、先週当欄で取上げたように、過去においては膨張したマネーが縮小する過程で株価急落などの○○ショックが起こっており、今回も注意が必要だ。
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