日本と中国に見る高齢化と社会保障
日本では平均寿命は過去最高を更新し続ける一方で、2020年出生数はコロナ禍の影響もあり1899年の統計開始以来の最低、少子高齢化が止まらない。長期にわたり人口増加と経済成長を謳歌してきた隣国中国でも、足元では少子高齢化が忍び寄っており、1979年から継続してきた一人っ子政策をついに撤廃、2015年から二人目を容認、それでも少子化が止まらないため本年5月には3人目まで容認した。生産年齢人口の減少と高齢化に伴う社会保障関連費の増大が将来的にGDP成長率を鈍化させる、所謂日本化の兆しが見えてきたことに中国政府も強い危機感を抱いている。
まず日本の状況を見てみると、コロナ禍で欧米同様に否応なく財政支出を拡大したことで、国の借金は急増し1,200兆円とGDP対比260%となった。少子高齢化が進む中でコロナ禍を受けさらに出生率は低下、将来に漠然とした不安を感じている国民は増えているようで、溜め込んだ金融資産は1,950兆円まで膨らんだ。
膨らみ続ける政府の借金だが、お金を何に使っているかと言えば、財政支出の配分は、社会保障関係費(35%)、利子など国債費(23%)、地方交付税(15%)で、この3つの合計は73%。残りの27%で国防や教育・公共事業などをやりくりしている。こう見ると社会保障関係費の減額は待ったなしだが、団塊世代の高齢化と長寿化により当面はさらに悪化しそうだ。
社会保障関係費の中身は年金(35%)、医療(35%)、福祉(13%)、介護(9%)などであり、政府も各項目の削減努力はしている。特に割合が大きい年金と医療関係費のうち年金に関しては以前当欄でも取りあげ、財政的には制度継続は大丈夫との試算を行った。残るは医療関係費だが、現在国民医療費は約45兆円でそのうちの4割を75歳以上の後期高齢者が占める。先日、後期高齢者のうち所得が一定以上ある人の本人負担を1割から2割へ引き上げる医療制度改革関連法が成立した。これにより国や企業と共に残額を支払う現役世代の負担は月々30円軽減されるとの試算で焼け石に水という感もあるが、本人負担を増やすことで高齢者が喫茶店替わりに病院に集うような事態は減るだろう。さらに踏み込むべきは高額な医療費 (国が決める診療報酬と薬価)で、このデフレ下においても診療報酬は継続的に引上げられ続けている。一方で、その帳尻を合わせるために薬価は断続的に引き下げられており、製薬会社は研究開発に回す資金や人材を確保できず、それが今回のコロナワクチン開発競争の敗戦へと繋がったと見ることもできる。ただし足元では皮肉なことにコロナ禍を受けて病院へ行く高齢者が減少、一部病院経営は悪化したものの政府の医療関連支出は減っているらしい。ちなみに年齢により医療費負担に差をつけている国は世界でも珍しいうえ、医療の公益性から英国では病院の専門医は公務員である。
ここで改めて中国を見てみると、中国は経済成長スピードが速かったため、中低所得高齢者の貯蓄が十分ではないうえ、社会保障関連などの整備も遅れ気味。このまま急激な少子高齢化へと突入すると、日本以上に高齢者を支える社会保障制度が破綻するリスクがある。このような背景もあり、武漢で流行がスタートした新型コロナウィルスは、実は高齢者をターゲットに中国政府が開発した生物兵器なのでは、などとSFまがいの憶測を呼んでいるそうである。
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