自民党総裁選
菅首相が自民党総裁選で不出馬を表明したことで、事実上日本の次期首相を決定することになりそうな今月の総裁選ががぜん注目される。現時点で出馬を表明しているのは、岸田前政調会長、高市前総務相、河野規制改革相の3名で、野田幹事長代行が出馬の意向。選挙は国会議員票383票と地方票383票を争うが、過半数を取れない場合は上位2名による決選投票となり、国会議員票383票と都道府県連47票で決定される。今回の総裁選は告示9/17、投開票9/29の予定であり、その後に衆院選を控えているため、自民党に逆風が吹く中、当落線上にある議員にとって選挙の顔となる新総裁への期待は大きい。そのせいか従来の総裁選は派閥主導が常だったが、今回は若手中心に派閥の拘束に応じない動きも表面化している。高市氏と野田氏は無派閥、河野氏は所属する麻生派領袖の麻生副総理の支持を得られていない模様で、カギを握るのは安倍チルドレンなど地元基盤が脆弱な若手、および地方票となりそうだ。
ここで各候補の現在までに表明している経済政策等をまとめてみた。
表1.各候補の政策など ※()内は世論支持率
派閥 持論・スローガン 具体的政策
岸田氏
(14%) 岸田派 財政再建、「令和版所得倍増」「デジタル田園都市国家構想」 テレワーク推進と地方活性化。公的価格委員会設置で成長と分配の好循環。金融緩和、財政政策、成長戦略で当面はPBより経済再建を優先。
高市氏
(7%) 無派閥
安倍元首相が支持を表明 「日本経済強靭化」、金融緩和、財政出動、成長投資の「サナエノミクス」 物価目標2%達成まではPB規律を凍結し積極的財政出動と緩和継続のリフレ派。憲法改正や安保強化など保守的。
河野氏
(27%) 麻生派
麻生氏は支持表明せず 年金改革「小さな政府と大きな年金」、脱炭素社会の実現 消費税を活用した年金改革。外国人材の受入れとDXの推進。カーボンニュートラルと脱原発を目指す、ただし既存原発は再稼働可。
野田氏
(2%) 無派閥
二階派に秋波 少子高齢化対策「人材増産計画」 財政・金融政策の正常化を目指す。規制改革を推進し経済を活性化。対中国穏健派。
現時点での新聞報道によると、派閥ごとの動きは以下の通り。議員数96人を擁する自民党最大派閥の細田派の実質的オーナーの安倍元首相は高市氏支持を表明。53人の麻生派および52人の竹下派は自由投票。47人の二階派は野田氏が獲得を目論み、46人の岸田派は岸田氏、16人の石破派は河野氏、10人の石原派は高市氏を支持となる。
これら予想をもとに、やや乱暴だが自由投票分と地方票を世論支持率で割振ると、総裁選は岸田氏200票、高市氏183票、河野氏314票、野田氏69票となり、どの候補も過半数には達せず、岸田氏と河野氏の決選投票となる。決選投票では支持候補が敗退した細田派、二階派、石原派も自由投票になると仮定すると、岸田氏172票、河野氏258票となり、この単純なシミュレーションでは河野新総裁誕生の可能性が高いという結果。
選挙は水もの、何が起こるかわからないと言われる通り、今回の自民総裁選も立候補者の確定から政策内容など未確定要素が多く、情勢は混とんとしている。但し、誰が次期総裁、そして首相になるとしても、足元のコロナとの闘いを始め、少子高齢化や低成長、デフレ、多額の財政赤字など、多くの難問が待ち構えており、長期政権の後は短期政権がしばらく続くとのジンクスの再現になる可能性もある。
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