米中対立の見通し

GDP世界1,2位の米中両国は、貿易や台湾問題などを巡り対立する中、11月15日に首脳会談を開催した。両首脳は電話会談を過去に2回行っているものの、対面(ただしバーチャル)での会談は今回が初であり、バイデン米大統領が対面会談を望んだのに対し、中国の習主席がオンライン協議ならと応じた形だ。会談は、習氏が中国共産党の重要会議、6中全会(中央委員会第6回全体会議)で異例の3期目続投に向けて足場を固めた直後だったのに対し、バイデン氏はアフガン撤退やインフレ高騰への不満から支持率を落としたタイミングだったことから、習氏優位での展開だったようだ。

会談は3時間半に及んだが、双方が自国の原則論を示すにとどまり、新たな合意や決定、金融市場に影響を及ぼすような議論が為された形跡もなかった。ただし、今回の会談で偶発的な軍事衝突を避けるために首脳対話を維持する重要性を確認した点は大きな成果だろう。足元で中国は海軍艦船数でほぼ世界最多、極超音速のミサイル実験も成功させるなど軍事力に自信を付けており、かつてとは異なり偶発的な軍事衝突が起きる可能性は高まっていた。

現状は、QUAD(日米豪印)による合同軍事演習に加え、英独仏の戦艦がアジアに寄港するなど先進各国が対中で協調を強めているため、中国は孤立気味にも見える。しかし中国は、ここにきてロシア海軍とともに日本を周航するなど、同じような専制主義思想国家との協調を進める一方、一帯一路政策など資金面の援助により新興国には中国に同調する国も多い。今後、何らかの紛争が発生、国連での決議を要するケースでは、加盟国には新興国が多いことから中国に有利となることも考えられる。

さて今後の展開だが、習氏としては国民の支持を固めるため、まずは来年2月の北京五輪を成功裏に終らせ、その上で2024年11月の米国大統領選で対中強硬路線をとるトランプ氏が再び大統領となるリスクを避けるため、来年夏から再来年央までの間で何らかの決着をつけたいところ。一方のバイデン氏は北京五輪への外交ボイコットをちらつかせ中国側を牽制、西側諸国に加えQUADなどの対中包囲網を固め軍事バランスを保ちつつ、対中で貿易と先端技術の利用などを制限することで経済的優位性を維持する作

戦のようで、ここ2年程度が米中対立の一つのヤマ場と思われる。

ところで、コロナ以前の2019年のGDP成長率を用いた計算では、2028年にも中国がGDP世界第1位となり、覇権国家の地位が米国と入替るとの予想だった。ここで改めてコロナ禍からの正常化の流れにある2021年の成長率予想を用いて計算すると、今後の米中のGDP成長線は平行線となり交差しない。加えて中国の少子高齢化も予想以上の速さで進行しており、今後の成長停滞の可能性も高まる。専制主義国家における経済成長の鈍化は、国内政治の不安定化に繋がるリスクもあり、米中の関係改善が期待される。

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