オミクロン株

新型コロナウィルスの変異株「オミクロン」の感染拡大に対する警戒感から、世界の金融市場はリスクオフの動きとなり、株式や商品価格は急落、安全資産として国債が買われた。

オミクロン株は11/9に南アフリカで採取された検体を元にWHOによりVUM(モニターリング対象の変異株)として11/24に指定報告されたもので、認定までの日数はデルタ株の7ヶ月に比べると格段に速かった。ゲノム解析によると変異箇所は全体で50あり、そのうち32が感染力に影響するスパイクたんぱく質にみられ、デルタ株の2倍以上らしい。また他の変異株と性質が異なることから、変異の背景には南アに多い免疫不全症のHIV患者の中で長期にわたって感染、変異を繰り返した可能性が指摘されている。

ここで未だ不明な部分も多いオミクロン株について、現在までに分かっていることを纏めてみた。

感染力…初期のアルファ株の6倍、夏場に感染拡大したデルタ株の2倍と感染力が既往株に比べ強い。

症状…EU11ヶ国計44人(11/30まで)の感染者は全て軽症か無症状、南アの感染者も軽症から中程度と重症化リスクは低そう。但し南アの感染者は若者中心、またブレークスルー感染が多くワクチンによる重症化予防効果が寄与した可能性もある。

ワクチンおよび治療薬…製薬会社ではモデルナのCEOが既存ワクチンの効果は弱いと発言、ビオンテックのCEOはワクチンに重症化を防ぐ効果は相応にある、アストラゼネカはワクチンが利かない証拠はないとし、未だ明確な見解は出ていない。一方で応用開発が容易とされるm-RNA型ワクチンを製造するファイザーとモデルナは、来春にはオミクロンに対応した新型ワクチンを提供できるとしている。リジェネロンは自社で開発した抗体カクテルの有効性が低そうだとする一方、メルクは既存の治療薬は有効と発表している。

一般的にウィルスの感染力が強い場合、症状は軽いことが多い傾向がある。これはウィルスが強い感染力と致死力を持つと、宿主(感染者)が早期に死に至ることでウィルス自身も死滅してしまう事態をウィルス自体が避けるためと考えられる。実際、アルファ株の致死率は1.9%、ベータ株は1.4%に対し、感染力が強いとされたデルタ株は0.1%と格段に低い。仮にオミクロン株の感染力がデルタ株の約2倍とすれば、致死率は0.1%未満に低下する可能性もあり、こうなると一般のインフルエンザと変わらない。これは重症度が低く感染力の強いウィルス株が重症度の高い株を駆逐するという、スペイン風邪など過去のパターンにも適合する。仮に感染力の強さと症状の軽さから、軽症あるいは無症状の患者が増加し抗体を持てば、ワクチン接種者と合わせ集団免疫状態が形成されるかもしれない。

足元では、オランダでロックダウンが再開されるなど各国で経済活動が再び停滞する可能性が高まっている。市場では、漸く緩和が見えてきた半導体などの供給制約の再燃を懸念し、製造業中心に業績悪化を織り込む動きも強まる。今後、各国が英米のように感染拡大をある程度許容し経済を優先するウィズコロナの政策を採用するか、あるいは鎖国か、対応次第で経済の先行きは大きく変動するだろう。

何れにせよ、今後2週間程度でオミクロン株の感染力、毒性およびワクチンや治療薬の有効性などが明らかになると思われる。アルファ株の昨年3月の相場にもう一度戻るのか、デルタ株の今年5月相場か、あるいはさらに軽いオミクロンショックで調整局面が終わるのかが注目される。

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