Fednoバランスシート縮小
米国では3月にも予想される利上げに加え、新型コロナ対策などで膨らんだFedのバランスシート縮小(Quantitative Tightening:QT)への警戒感から金利上昇と株価調整が起こっている。パウエルFEB議長は上院公聴会で利上げとともに、QT開始の年半ばへ前倒しと前回(リーマンショック時)以上の縮小ペースを示唆した。ここで1995年以降のFedのバランスシート(BS)と株価(NYダウ)、政策金利(FFレート)の推移を図1に示した。
これを見ると、新型コロナ対策として大規模な流動性供給を行った結果、FedのBSが2年間で3.8兆ドルから8.7兆ドル(GDP比36.5%)へと前回を上回る規模で拡大したことが分かる。ここでリーマンショック時のQTまでの流れを見てみると、流動性供給政策によりFedのBSが1兆ドルから4.5兆ドル(GDP比25%)へと拡大。その後テーパリングを経て2年後に利上げ局面入り、結局QT開始はショックの9年後だった。一方でQTのゴールはGDP比16.5%程度となる3兆ドルが想定されていたものの、道半ばのGDP比18%でチャイナショック(2018年)により中断、そのままコロナショックとなった。今回は足元で加速するインフレ沈静化のため、出口戦略のスピード感は速くなっており、ゴールを仮にGDP比20%とすると4.7兆ドルとなり、削減幅は4兆ドルと試算される。
ところで前回QTでは「ペンキが乾くように」(ハーカー フィラデルフィア連銀総裁:当時)との表現からもわかるように、緩慢なペースでのBS縮小が図られた。具体的には毎月償還となる国債の再購入はしない、但し償還が集中する4半期末月には適度に購入して過度な引締め感が出ないように配慮した。今回予想される削減目標は4兆ドルと巨額だが、BSも大きいため予定償還額も同様に大きい。つまり償還分の再購入を停止すれば、市場が恐れる売りオペを行わないでもある程度の速さでBS縮小が進む。表1はFed BSの償還予定額とその累積額だが、償還分の再購入を見送るだけで2029年には目標のGDP比20%へ到達する。加えて米GDPの成長率を年3%とすれば目標到達はさらに2年ほど早まる。以上より、今回のQTは売りオペは行わず、4半期毎の調整を短期債中心に行いつつ、10年程度を目途に完了と予想する。図1を見ると、前回QTでは株価の調整はほぼ無かった。今回も前回同様の手法であれば米株の大幅な調整を避けられるかもしれない。
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