電気を貯める
地球温暖化対策の一環として世界中の国や自動車メーカーが、石油消費を減らし気候変動問題に対処するカギとなる電気自動車(EV)推進に取り組んでいる。欧州は2035年にガソリン車などの新車販売禁止を決定、日本が開発で先行する水素自動車は販売を認められるものの、ハイブリッド車はガソリン車として扱われるようだ。テスラをはじめとする新興企業を含めた各国自動車メーカーがしのぎを削る中、新型車両の大半がEVとなることで、新たに世界的な電気不足も懸念される。そこで電力の供給状況を見てみると、再生エネルギーで先行する欧州では、昨年は主力の風力発電が偏西風の蛇行で出力が低下、化石燃料での発電を推進すれば温暖化対策に逆行と見做されるため、苦肉の策として原子力や天然ガス発電を脱炭素エネルギーに認定した。
ここで日本のエネルギー事情を見ると、発電量の約75%は化石燃料で、原子力が5%、水力や太陽光など自然エネルギーが20%となっている。風力や太陽光など自然エネルギー由来の発電設備の増設が望まれるが、島国形状の日本では平地が少なく増設余地は無くなりつつある。つまり日本でEVを推進しても現状は電力不足が起こり、結果的に火力なら20基、原発なら10基程度の発電所が必要になる。東日本大震災の記憶が残る中、原発再稼働や新設のハードルは高く、かと言って火力発電を増やせば、結果的にCO2削減効果は限定的となる。八方塞がりのようだが、自然エネルギー由来の発電設備の稼働率を引き上げることで、問題解決を図ろうとする動きもある。
電力は通常、余剰電力を貯蔵(蓄電)しないため、夏場の晴れた日などは太陽光発電量が増加する一方、電力消費は比例的には増えないため、電力会社は買電を拒否、発電所の稼働率は低下する。そこで蓄電設備を設置・増強できれば、既存の自然エネルギーによる発電設備をフル稼働させることができ、効率的な発電が可能となる。さて、その具体的な方法としては、
1.電池式…EVなどで能力が低下した電池を廃棄せず再利用し、大型の蓄電設備を整備する。
2.電解式…電気を使って水を水素と酸素に分解。電力の必要時に水素と酸素の還元反応で発電する。
3.蓄熱式…電気を熱に変えて蓄熱材(溶融塩や砕石)に貯蔵。必要時に水蒸気でタービン発電する。
4.揚水式…電気で水をダムの貯水池までくみ上げ、必要時に放流して水力発電する。
5.おもり式…電気でおもりを高所に巻き上げ、必要時に落下させて発電モーターを回し発電する。
このように蓄電の手法はいろいろあり、今後日本でも様々なビジネスが生まれそうだ。
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