ウクライナ情勢 その2
2/24にロシアのプーチン大統領は「ウクライナ東部の親ロシア派地域の人々を守るための特別軍事作戦」を宣言、ロシア軍によるウクライナ侵攻が始まり、翌日にはロシア軍はウクライナ各地で攻勢を強め首都キエフに迫った。事前にロシアの軍事侵攻の可能性が高いと米国政府が警告していたものの、ウクライナ国民を含め世界中は驚愕、市場はリスクオフの動きとなった。
・当初予想と異なる展開…戦力比較をするとロシア軍がウクライナ軍を圧倒しているため、市場では当初、首都キエフ陥落に要する時間は2,3日との見方が優勢であり、近年のイラク戦争やクリミア紛争と同様に短期間でのロシア軍勝利による終結が予想されていた。しかし現実にはロシア軍が予想外に苦戦、ウクライナ国民の士気の高まりに加え、西側諸国からの武器供給によるウクライナ軍の戦闘持続力の向上もあり、ロシア軍による短期勝利のシナリオは崩れつつある。
・焦るロシア…国連決議などウクライナ侵攻に対する非難の高まりに加え、西側諸国による金融、貿易面での素早い制裁がロシア経済の打撃となっている。国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシア系銀行の排除、一部外貨準備の凍結などにより通貨ルーブルは急落、エネルギー企業等の資金繰りも悪化、国内では輸入品が枯渇し急激な物価上昇が始まるなど、経済状況は急速に悪化している。加えて3月下旬になると気温上昇から凍結した地面がぬかるみ、戦車など地上部隊の進軍に支障を来すため、ロシアは早期の事態収拾に動くと思われる。特に侵攻を独断で進めたプーチン大統領は戦略核に言及し、西側特にNATO軍の参戦を牽制しつつ市街地への爆撃を開始、なりふり構わず侵攻を進める。
・停戦協議…これまでに事態の打開に向け停戦協議が2回行われたが、ロシア側はクリミアなどのロシア領承認やゼレンスキー大統領の退陣、ウクライナの非武装化とNATO非加盟などを要求。一方のウクライナ側はロシア軍の即時撤退を求めると共に、西側に対しEUへの加盟を要求するなど落としどころは見えない。特にプーチン大統領は20年以上最高権力者として君臨するなど国内政治基盤は盤石であり、対外的に妥協する可能性は低そうだ。
・今後…ロシアが侵攻を続けウクライナの実質支配を実現するか、経済制裁などを理由に諦めるかだが、ロシア側の戦力優位は明らかでありウクライナ降伏は時間の問題との見方が多い。但し、想定外に長期化・泥沼化すれば、西側諸国による制裁は続くため、ロシア経済のダメージは時間の経過とともに拡大する。一方、ウクライナ又は西側諸国がプーチン大統領を納得させる条件を提示する、或いはロシア国内の反戦運動が拡大、プーチン氏の支持基盤が崩れ失脚となりロシア軍撤退の可能性もある。ここで注意が必要なのは、対米戦略でロシアと協調関係にある中国の動きだろう。既に侵略行為を容認、エネルギー供給などで支援を表明しており、紛争長期化に備えた動きにも見える。
・日本への影響…ウクライナから地理的に遠く、ロシア・ウクライナ両国との貿易面での繋がりは、輸出シェアは合計で約1%、輸入シェアは約2%と極めて小さく、早期終結を見越せば経済への影響は限られると思われていた。しかし足元では、紛争の長期化懸念とロシアへの強力な経済制裁に伴うエネルギーや小麦などの価格上昇、加えてサハリン2など国内勢が保有するロシア権益の毀損、またロシア系銀行の破綻リスクなど金融にかかるシステミックリスクの拡大も警戒される。一方で台湾併合に意欲を持つ中国や国連の緊急特別会合でロシア支持を表明した北朝鮮を隣国に抱える日本の地政学リスクも、改めて懸念材料として認識される。日本株はウクライナ侵攻を受け、当初はロスチャイルドの「銃声が鳴ったら買え」という相場格言通り反発したが、足元では警戒モードへと逆戻り。停戦協議の行方を注視している。
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