ウクライナ情勢 その3

2/24のロシア軍によるウクライナ侵攻から2週間が経過したが、ウクライナ軍の抵抗により当初の短期終結予想は外れ、戦況は泥沼化している。ここでウクライナ情勢と各国市場の今後を占ってみる。

・ロシア…紛争長期化に伴い西側からの経済制裁による経済的混乱の深刻化が想定されるうえ、3月下旬には気温上昇による地表面の軟化が地上部隊の進軍を難しくすることから早期決着を目指すと見られ、米政府は今後数日内の総攻撃を予想している。ウクライナ制圧の成否にかかわらず西側からの経済制裁は長期化が見込まれ、ロシア経済は長期的な停滞に陥ることは避けられない。今後、生活環境の劣化に伴う国民の反戦気分の高まりにより、プーチン政権の弱体化が予想される。プーチン氏に残る選択肢は、友好関係にある中国からの支援を頼りに侵攻の長期化に耐えるしかなく、特に経済面では、国家収入の半分近くを占めるエネルギー輸出を中国向けに継続できない限り、通貨ルーブルとロシア株の低迷は避けられそうにない。

・ウクライナ…ロシアによる攻撃で多数の国民が難民化、経済も崩壊しているため、独立を確保できたとしても復興には時間を要する。一方ロシアに制圧された場合、反ロシア勢力によるゲリラ活動が長期にわたり続くと予想され、アフガニスタン化するリスクもある。

・米国…足元でロシア産原油の禁輸などの制裁を行っているが、対ロシア貿易額は輸入、輸出共に1%以下と非常に小さく経済への影響は限定的。特にエネルギー面では、米国の石油と天然ガスの生産余力は大きく、ここ数年は地球温暖化対策としてシェールオイルとガスの生産を抑制しているが、足元ではシェール増産の動きもある。ウクライナ問題が長期化しても、石油、穀物、戦力、加えて基軸通貨米ドルを持つ米国経済は相対的な優位性を保ち、通貨、株は底堅いか。

・欧州…エネルギーはロシアからの輸入に3割以上頼っているうえ、民間事業会社や銀行の持つロシア向け権益は日米と比べ大きい。加えて地理的にロシア・ウクライナに近いことから地政学リスクも高まっており、長期的に欧州経済は制約を受けると予想され、通貨ユーロおよび欧州株の上値は重そうだ。一方、今後中国がエネルギーの調達先をロシアにシフトすることになれば、現在中国向けに輸出している分の石油は余ること、また中東や米国では原油増産が予定されていることから、時間とともにエネルギー問題は沈静化する可能性もある。

・日本…ウクライナから地理的に遠く、ロシア・ウクライナ両国との貿易面での繋がりは、輸出入ともに1~2%程度と極めて小さい。しかし日本はエネルギーや食糧を輸入に頼っており、資源価格の世界的上昇は日本経済を疲弊させる。すでに1月の貿易収支は過去2番目の赤字となり、今後さらに膨らみそうだ。欧米のような物価の大幅な上昇は見込みにくいが、通貨円と日本株の上値は当面重そうだ。

・中国…ロシアによるウクライナ侵攻に理解を示し、小麦や石油の追加輸入に合意するなどロシアを支援する立場。中国は基本的に資源輸入国だが、合意によりロシアから石油などを市場価格より割安に購入できることとなれば、相対的な経済優位性は高まり、通貨元および株価は底堅い動きが予想される。但し米国は、中国がロシアへの経済制裁の抜け穴になっていると非難しており、米中関係の悪化が見込まれる。加えてウクライナ情勢の行方次第では、中国が台湾支配の動きを強める可能性もあり、その場合は今回のロシアと同じ道を辿るかもしれず、世界は冷戦時代に逆戻りとなる。

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